それはスマートフォンの「データ同期機能」です。最近、スマートフォンで撮影した写真をはじめ、あらゆるデータをオンラインストレージ(iCloud、Yahoo!ボックス、Dropboxなど)にバックアップとして同期する人が増えていますが、純也さんの妻も例外ではありませんでした。
妻がスマートフォンのデータを同期している先はパソコンやタブレット。どちらも外に持ち出さず、家で使うだけなので端末や同期ソフトにパスワードを設定しておらず、純也さんが見ようと思えば見られる状態でした。
同期機能は複数の端末でデータを共有することで予期せぬデータの消去などに対処できる反面、「見られたくないデータ」を他人に見られる可能性があります。純也さんはこれまで「妻の秘密」を暴くことを躊躇していたのですが、仮に妻が不倫をしていて娘が大変な目にあってはよくないと思い、意を決してタブレット上のiCloudを開いてみたところ……「案の定」という結果だったのです。
なんとそこからは妻と不倫相手のツーショットの自撮り写真がでてきたうえ、2人の密会は水曜に集中していることまでわかりました。
純也さんが一番カチンときたのは一枚の写真。結婚5年目に純也さんが購入して寝室に飾っていた絵画の一部が写りこんでいたので、情事の現場が「うちの寝室じゃないか!」と疑わざるを得なかったといいます。
「もう娘も大きいし、2人目を考えていないので、寝室のベッドはツインですが、いくらなんでも!」
あまりにも大胆不敵な犯行に純也さんは開いた口がふさがらなかったそうです。おそらく真昼間の情事は妻側のベッドで行われており、純也さん側のベッドにはその痕跡はなかったので気がつかったのかもしれません。
水曜に限らず、平日の昼間は純也さんが家族のために会社で働いている時間帯なので留守ですが、もし、純也さんが体調を崩して会社を早退してきたら、どうするつもりだったのでしょうか。「夫と彼が鉢合わせたらクローゼットに隠れればいい」などと甘く考えていたのかもしれませんが、夫婦にとって大事な空間を汚されたことに純也さんはショックを隠せませんでした。
しかし、それだけではありません。
そもそも、純也さん夫婦の住所は地方都市で駅まで車で20分ほどの立地。男が電車で訪ねてくるのは不便な場所です。
「もしかすると僕がいない間、クルマで来ていたのでは? 僕が車で出勤しているので、うちの空いた駐車スペースに停めていたのでは!?」
純也さんはそう思い、動画を連続撮影できるビデオカメラを自腹で購入し、家の駐車スペースを正面から撮影できる場所を探し、そして水曜の朝、出社する前にカメラを設置してみることにしました。
そして純也さんが足早に帰宅するとカメラを回収し、妻に見つからないよう動画を再生してみたところ、午後1時に現れたのはシルバーの高級輸入車のセダン。何食わぬ顔で純也さんの駐車スペースに陣取ると、男は慣れた様子で自宅の玄関から侵入していたのです。
しかも、男は「いつものルーティーン」という感じで妻の見送りに手を振り、車に乗り込み、2時間で立ち去るという一部始終がHD画質で鮮明に記録されていたのです。
純也さんは妻が言い逃れできない「決定的証拠」を掴んでしまい、全身からスッと血の気が引くのを感じました――。
(後編に続く)