# がん

大腸がん「ステージ4」宣告から生還した患者とその主治医の全告白

命を救ったトップドクターの決断
木野 活明 プロフィール

人工肛門を回避

直腸がんの手術は2月18日に行われた。

「直腸の腫瘍は肛門から10センチ離れていたので永久人工肛門にすることなく切除できました。腹腔鏡は骨盤の中が非常によく見えるので、いまはがんが肛門から1センチしか離れていない場合でも、腹腔鏡下手術で人工肛門を回避することが可能になっています」

2月末に退院後、3月初旬から肝臓がんを縮小させるため抗がん剤治療を開始する。5月初旬に抗がん剤の効果をチェックするためCTを撮ると、2カ月で腫瘍は元の3分の1まで縮小していた。抗がん剤が効いたのだ。

ただ、術前のネオアジュバント療法は、手術に入るタイミングの見極めが難しいと川本医師がこう説明する。

「抗がん剤で3分の1までがんは縮小しましたが、その後消失することはないんです。逆にリバウンド現象が起き、抗がん剤が効かないがん細胞が残ると逆に大きくなってくる。

がんが最も縮小した時点を正確に見極めることが、手術の出来を決めるといっていい。ネオアジュバント療法と腹腔鏡下手術の合わせ技を実践している施設は限られてきます」

写真は杏雲堂病院

5月中旬、転移した肝臓がんの切除手術を行った後、再発予防のため術後に点滴で抗がん剤治療を行うアジュバントケモセラピーを6回行った。しかし、翌年の2014年11月に肝臓の左葉に5センチの転移がんの再発が見つかったのだ。

12月に再び左葉の3分の1を切除する開腹手術を行い、2015年2月から半年間、点滴による抗がん剤治療を行った。

「2度肝臓に転移再発しているので、点滴の抗がん剤の治療の後、抗がん剤の効果を高め、副作用を防ぐTS1(テーエスワン)を服用してもらいました。ダブルの抗ガン剤治療が効きました。その後これまで2カ月に1度の通院採血と半年に1度CTを撮っていますがどこにも全く影は見えません」(川本医師)

手術入院していた期間を除き、ほとんど会社に通い仕事を続けていたという森山さんがこともなげに言う。

「今年の2月でがんが見つかって6年が経過します。再発からは今年の12月で丸々5年ですが、この間全く異常がありません。お酒の席が多いのでついビールが飲みたくなります。我慢してノンアルコールビールを飲んでいますが1本では済まないんですよ」

 

川本医師は森山さんのように難治がん手術から生還して仕事に復帰し、現場でバリバリ働いている患者さんを何人も診てきている。その秘訣をこういう。

「主治医と患者さんの馬が合うというか、お互いに遠慮せず何でも話せる関係が非常に大事です。馬が合わない医者との治療は止めた方がいい。抗がん剤が辛かったら『量を少なくしたい』と言える間柄がなければ長いがんの治療は難しい。一方通行でやっている施設とは患者さんの余命も大きな差が出ます」

川本医師は取材の最期に最近の医大生の外科医離れをこう嘆いた。

「患者さんの命を救ったという達成感は、医者でなければ味わえない感激です。科目の選択も大学で臨床の教授として学生と向き合っていますが、外科医をやりたいという学生は非常に数ない。

外科医はリスクが大きいと、彼らはノーリスクで、ある適度の利益があるミドルリターンの職業を選ぶ、医学部の科目の選択も同様です。外科医がどんどん減り、10年後には外科医の数は大幅に減っているでしょう。国はこうした医療現場の危機的状況を分かっているのでしょうか」