2019.04.01
# スポーツ # ビジネススキル

野村克也氏が「野球は考えるスポーツ」だと断言するワケ

ひらめきは突然生まれない
野村 克也 プロフィール

三冠王になるために必要なこと

2015年シーズンに、福岡ソフトバンクホークスの柳田悠岐と東京ヤクルトスワローズの山田哲人のふたりが達成したことで流行語にもなった「トリプルスリー」。

Photo by iStock

1シーズンの成績が「打率3割、本塁打30本、盗塁30個」を達成した選手にのみ与えられる称号で、山田は2015年、2016年に2年連続のトリプルスリー、さらに2018年に前人未到の3度目のトリプルスリーを達成した。

近年、このトリプルスリーが取り沙汰されるようになったのとは逆に、すっかり聞かなくなってしまったのが「三冠王」である。

手前味噌な話で恐縮だが、実は私は戦後初の三冠王を1965年に獲得した(打率3.20、本塁打42本、打点110)。その他には王貞治が2度(1973年、1974年)、落合博満が3度(1982年、1985年、1986年)記録しており、その後、2004年の松中信彦(福岡ダイエーホークス)以来、三冠王は日本プロ野球界に誕生していない。

ホームランを打つような打者は足はそれほど速くない。そうなると出塁率は下がるから、本塁打と打点は稼げても、打率で首位打者を獲得するのは難しくなる。近年、足の速い巧打者が多くなっているだけに、三冠王を取ることがより一層難しくなっているのだ。

両リーグの歴代の首位打者を見ても、左打者が圧倒的に多い。これはそれだけ左打者のほうが右打者より有利だということの証左である。

 

だが、中には右打者で高打率を収めている選手も幾人かいる(近年では、2014年に阪神タイガースのマット・マートン、2016年に読売ジャイアンツの坂本勇人、2017年に横浜DeNAベイスターズの宮崎敏郎が首位打者を獲得)。これらの打者のように、右打者で高打率を残すにはどうすればいいいのだろうか?

私は右打者と左打者を比べた場合、打ち終わってから一塁方向へスタートを切るのに、約3メートルの差があると考えている。

これは左バッターボックスのほうが右バッターボックスより一塁に近いから、という物理的な理由だけで言っているわけではない。

左打者の場合、バットを振り切った後の重心は一塁方向にすぐに向けることができる。しかし、右打者は振り切った後の重心がどうしても三塁方向へ行ってしまうから、そこから反対の一塁方向へ重心を移すだけでも相当なタイムロスとなる。

ましてやそれが、バットを思いっきり振り切る長距離砲タイプの打者ともなれば一層不利である。これでは内野安打など望むべくもない。

では、ただでさえ足の遅い私が、なぜ三冠王を獲得することができたのか? それは「打ち損じ」を減らし、確実に捉えることのできる「1球」に狙いを絞ったからである。私が打者として大成できたのは「ヤマを張る」術に長けていたからだ。

SPONSORED