「車に飛び込もうとさえ思った」山根明・前会長が明かす苦悶の日々

戦後を生き抜いた男の数奇な人生
千吉良 美樹 プロフィール

「奈良判定」

しかし、そのほかの項目については、山根氏は一貫して否定し続けている。

「例えば、アディダスグローブの独占販売について指摘されましたが、AIBA(国際ボクシング協会)の突然の決定で、国際大会ではアディダスグローブを使用しなければならなくなったものの、販売店が見つからなかったがために、連盟関係者が販売を請け負うことになったんです。

その経緯については、本の中で詳しく書いていますが、決して不正はありません。告発騒動後の第三者委員会による調査でも『問題ない』とされています。

 

昨年『流行語大賞』の候補にまでされてしまった『奈良判定』や『おもてなしリスト』も、私が圧力をかけて強要したものやないんです。

私が連盟に加入した当時、今とは違って、そこではさまざまな力が働いていました。特に当時の近畿連盟(現在の関西連盟)は荒くれ者の集まりで、立場の弱かった奈良連盟の選手たちは不当な敗北をたびたび余儀なくされていたんです。

むしろ、そういった不正を正すために、私は戦ってきたと思っています。そのことについては、奈良連盟の関係者だけでなく、朝鮮高校の関係者をはじめ、『感謝している』と言ってくれた人たちもたくさんいたはずだったんです。しかし、去年の騒動の時、誰も声を上げてはくれませんでした。

『おもてなしリスト』だって、私が普段飲まない焼酎や、絶対に口にしないお菓子がたくさん用意されていた。私が自分のために指示したのであれば、私の好きなものが書かれていないとおかしいでしょう?」

山根氏によれば、「おもてなしリスト」なるものが用意されたのは、2017年に愛媛で行われた「第72回国民体育大会」のときからだったという。

「実は、あの国体の直前に、尾てい骨を怪我したんです。それで会場に行ったら、いつもはパイプ椅子なのに、なぜか革張りの椅子が用意されていた。当時は、『誰かが私の怪我を気遣ってくれて、愛媛連盟の関係者に伝えてくれたのか』と思いました。ただ、なぜ突然もてなされているのか、あの時はわからなかったんです」