1839年、ノルウェーで観察されたオーロラ Photo by Getty Images

江戸時代にも記録あり オーロラが赤くなると「最悪の宇宙環境」だ!

ゆらめくオーロラをどう記録する?
天空を舞台に繰り広げられる、とてつもなく大きな自然現象──オーロラ。地球に生きる人類は、昔から、捉えどころのないその姿に目を見張り、時に記録してきた。

現代における宇宙物理学のさまざまな研究対象のなかでも、オーロラは極めて複雑な現象だという。ノルウェーの科学者、カール・ステルマーが4万枚を越える写真から三角測量によって、初めてオーロラの高さを明らかにしたのが、およそ100年前。しかし今世紀までオーロラを立体的に見ることは、意外にも、人間の目には不可能と考えられていたという。

日々進化するICT技術とビッグデータを駆使して挑む人類に、オーロラは今、何を語りつつあるのだろうか?

(聞き手:池谷瑠絵 特記外の写真:飯島雄二 「サイエンスリポート」より転載)

緑のオーロラは、地球に酸素がある証拠

私たちはふだん気にせずに暮らしているが、太陽光以外にも、宇宙からは電磁波や宇宙線と呼ばれるエネルギーの高い粒子などが昼夜を問わず降り込んでいる。

このような地球の外にある宇宙という環境を考慮することなく、オーロラを理解することはできない。

特にオーロラは、太陽活動と密接な関係がある。「太陽から吹き出す超高温で電離した粒子が、地球を取り巻く地磁気のバリアに遮られると大きな電流が生じます。オーロラは、この電流を担って宇宙から降り注いでくる猛スピードの電子を大気が受け止め、人間の目にも見えるほど明るく大気が発光する現象」と片岡龍峰准教授(国立極地研究所)は解説する。

片岡龍峰片岡龍峰 准教授

太陽から吹き出す超高温で電離した粒子(プラズマ)を太陽風といい、これと地磁気、大気の3つが揃ってはじめてオーロラが生み出されるのだ。

このためオーロラは他の惑星にも見られ、たとえば木星や土星ではピンク色のオーロラが光る。

「オーロラの色は基本的に大気の組成で決まるため、色によって大気の成分がわかります。地球では鉛直上空およそ100キロでは緑っぽい色、200キロでは赤色、90キロではピンク色になります」

象徴的なのは、緑のカーテンのような典型的オーロラが光るのは上空100キロであり、そこに多く含まれるのは、生命に欠かせない酸素だということだ。

酸素原子が放つ緑のオーロラを見られるのは地球だけ……「オーロラを知ることは宇宙と地球、そして生命のつながりを知ることでもあるんです」と、片岡准教授は言う。

またオーロラは、基本的にオーロラオーバルと呼ばれる北極・南極域にリング状に生起する。太陽風によって磁気圏で生じた大量の電流が、地球の周りにある磁力線に沿って、2つの極へ向かって進入してくるためだ。

しかし上空100キロもの宇宙空間で起こるオーロラはあまりに遠く、地上にいる私たちは左右の視差を使って立体視することができない。

実は2010年、オーロラの3D映像の生成に成功し、同時に距離の計測方法も開発したのは片岡准教授だった。「身近で新しい技術をうまく使って、見えなかったオーロラの姿を観測していきたいという考えは、今も同じ」という。

カーテン状にゆらめく緑のオーロラ。地球で見られる典型的なオーロラだカーテン状にゆらめく緑のオーロラ。地球で見られる典型的なオーロラだ。国立極地研究所南極・北極科学館のオーロラシアターにて(観測地:昭和基地)

なぜオーロラは複雑なのか?

最近は、日進月歩に進化する高感度カメラを使って、アラスカの夜空の観測記録に取り組む。

「人間の目で追える変化には限界があります。人間の限界よりも高感度かつ高速に、連続的に撮影し、1年で約500テラバイトぐらいのデータを取得しています。このデータで、オーロラを見直したら、どんな世界が見えてくるか?」と、期待をかける。

というのも「オーロラは、ものすごく複雑なんです」と片岡准教授は言う。