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説明できますか? 「ヘリウム分子」が存在しない理由

量子化学の驚くべき威力

複雑怪奇な化学現象を見通しよく

化学の面白さはその変幻自在な分子の変化にあります。しかし、化学嫌いにとっては、その変幻自在が複雑怪奇に映るだけです。

私たちも含め世の中の森羅万象の多くは、化学的な現象であると言えます。それらをすべて網羅的に暗記するなどとうていできない業ですし、その必要もありませんが、そこに何か統一的なお話がないと、現象がただただ複雑怪奇に見えてしまうのはしかたのないことかもしれません。

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そうした複雑怪奇な化学を見通し良くするために「量子化学」という考え方があります。ここでは、そのさわりを紹介してみます。

水素分子はなぜH2なのか

水分子は、1個の酸素原子に2個の水素原子が「結合」したものです。二酸化炭素は、1個の炭素原子に2個の酸素原子がやはり「結合」したものです。それでは、「結合」は何によって起こるのでしょうか?

水素分子は2個の水素原子からできていて、H2と表されることは皆さんもご存知のことと思います。では、なぜ水素原子は2個集まるとH2になり、2個の水素原子(H)のままでいないのでしょうか?

分子は複数の原子からできていますが、分子がどのようにでき、どのように変化するか、そのすべての鍵を握るのが、原子の中にいる「電子」です。「化学」と呼ばれる科学分野で、私たちが学ぶことのほとんどすべては、実は「電子の性質」によって引き起こされる現象なのです。

それでは、電子の性質やその動きのすべてがわかれば、「化学」がすべてわかるということなのでしょうか?

そのとおり、すべてわかるのです。

20世紀の前半に確立した物理学の重要な一分野である量子力学は、原子や分子の構造や性質を調べる物理学です。この量子力学を使って電子の性質や挙動を理解することで、化学は大いに進歩しました。量子力学を使って、化学の問題を考えるのが「量子化学」であり、今や化学にはなくてはならない分野になっています。

H2分子は安定で、そのままにしておいても、容易にH原子には分かれません(もちろん火をつけると燃え、水分子になりますが)。どうしてでしょうか。この実に簡単な、そして化学の基礎の基礎は、量子力学で説明されるまではよくわかりませんでした。