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人気作家が婚活をテーマに「大人の恋愛」を描く話題作『傲慢と善良』

辻村深月インタビュー

年を重ねたがゆえの苦しさ

―昨年、本屋大賞を受賞した『かがみの孤城』をはじめ、10代から大人まで幅広い年代の葛藤を描き続ける辻村深月さん。新著の『傲慢と善良』は、婚活で出会った男女の物語ですが、今回、「大人の恋愛小説」を書こうと思ったきっかけを教えてください。

30代半ばを過ぎたころから、同世代の人と話すと、男女問わず婚活の話題が多くなったんです。

10年前『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』という小説を書きましたが、当時、29歳だった私は、山梨でOLをしていた頃の経験から、地方に暮らす同年代の女性たちのいま感じている生きづらさのすべてを描ききりたいと思っていました。ですが、彼女たちにはその後も時間が流れていて、年を重ねたがゆえの新たな苦しさも生じているはず。

婚活は、自分の価値観や性格、譲れないところなど、生きてきたすべてが凝縮されて現れる場。この婚活を通じて、現代の女性たちの姿を追ってみたいと思いました。

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―主人公・西澤架(39歳)は、東京に暮らしていて、群馬で生まれ育った坂庭真実(35歳)と婚活アプリで出会います。物語は男性目線で進んでいきますね。

私自身が地方を離れてみて、結婚を前に苦しんでいるのは、女性や地方の人だけではないと実感するようになり、都会に住む人や男性の息苦しさも描きたいと思いました。

 

都会と地方の差は、選択肢の差だと思うんです。でも、選択肢が多いからこそ選べないこともある。架はルックスが良くて、多趣味で友達も多く、モテ格差でいうと上位にいるモテ男なのに、だからこそ選べない、あるいは選ばないまま歳を重ね、40歳を目前にして結婚に焦りを抱きます。

―そうして交際をはじめた二人ですが、真実はストーカー被害に遭い、突然姿を消してしまいます。一体何が起きたのか。謎が物語を牽引します。

私は、小説はお説教するものではなく、エンターテインメントだと思っています。ある問題を背景に事件が起こり、読み進めていくうちに、最初は興味がなかったその問題から、目を逸らせなくなるような小説を書きたい。

今回も、真実の失踪という謎に惹かれて読むなかで、婚活というテーマに自然と関心が向いてくれればと考えました。