東京五輪で大流行の可能性も…?知っておきたいはしかウイルスのこと

妊婦の場合、胎児の発育異常の恐れも
村上 和巳 プロフィール

「ワクチン利権」の虚構

ワクチン接種を呼びかける報道が流れると、「あれは儲けたい製薬会社と医師の陰謀だ」との言説が散見される。はっきり言ってこれはフェイクニュースの類と言っても過言ではない。

photo by iStock

麻疹ワクチンは、麻疹単体のワクチンと、風疹との混合ワクチンがそれぞれ3製品、合計6製品あり、製薬企業は武田薬品、第一三共、田辺三菱製薬の3社だ。

このうち決算資料で売上高が公開されている田辺三菱製薬の麻疹・風疹混合ワクチン「ミールピック」の2016年3月期の年商は59億円。田辺三菱製薬の年間総売上高は約4240億円に占める割合はわずか1.4%に過ぎない。

他の2社の麻疹関連ワクチンの売上規模もそう大きくは変わらないと考えられている。第一三共の年間総売上高は約9600億円、今年の1月に日本企業史上最高額の買収を完了した武田薬品に至っては3兆4000億円である。

麻疹関連ワクチンの売上高の占める割合は第一三共では約0.6%、武田薬品では約0.2%。「ないよりマシ」というレベルに過ぎない。

では、医師はどうか?

ワクチン接種は医療保険の適応ではなく、接種する医療機関がワクチン費用を含む接種費を任意で決められる。インターネット上で調べるとわかると思うが、おおむね麻疹単体のワクチン接種が5500円前後、風疹との混合ワクチンが1万1000円前後である。

一方、ワクチン価格は、2013年に日本医師会が全国の医療機関を対象に行ったワクチン納入価を調査によると、1人接種分のワクチン平均納入価は麻疹単体ワクチンが2590円、風疹との混合ワクチンが5383円である。つまり病院の利益は、麻疹単体ワクチンで2910円、風疹との混合ワクチンで5617円である。

ワクチン接種では接種前の問診、実際の接種、接種直後の急性アレルギーの監視など作業が必要になる。にもかかわらず、この金額で、医療機関や医師がワクチン接種で「儲けている」と騒ぎ立てるのはかなり的外れな指摘である。

 

いま求められていること

そもそも麻疹が流行すれば、感染者のみならず、それと接触した人も含め警戒が必要となり、その対策にもコストを要する。場合によっては交通機関や企業、医療機関の運営にも支障をきたす。

実際、昨年麻疹が流行した沖縄県では、3月の流行の始まりから県による6月の終息宣言までに、旅行のキャンセルなどの直接的な経済損失だけで約4億2000万円と試算されている。

来年は日本で東京オリンピック・パラリンピックが開催され、大勢の外国人観光客などの来日が見込まれている。そうなると麻疹ウイルスの海外からの持ち込みによる感染の危険性も高まる。

そして日本では昨年来、麻疹に加え、風疹の流行もあり、アメリカの米疾患管理センター(CDC)は現在も国内向けに妊婦の日本渡航を控えるよう勧告も出している。

一大祭典時に先進国の一角を占める日本で麻疹流行というのでは、日本は世界に恥をさらすことになる。まずは、それぞれが麻疹の罹患歴・ワクチン接種歴を確認し、不明な場合は積極的にワクチン接種することこそが今まさに求められていることの一つでもある。