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東京五輪で大流行の可能性も…?知っておきたいはしかウイルスのこと

妊婦の場合、胎児の発育異常の恐れも

今年に入り国内で麻疹(はしか)が急速に流行している。1月1日から3月6日時点までに発生した全国の麻疹患者数は285人。2カ月強で昨年の患者数282人を上回り、過去10年で最も年間患者数が多かった2014年の462人を上回るハイペースで感染が蔓延している。

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今、麻疹は世界でも猛威をふるっている。全世界の世界保健機関(WHO)への報告例は2018年の6月から11月は月間1万人〜2万人程度だったが、12月に4万522人、19年1月は6万2225人と増加。

フィリピンでは昨年1年間で2万人以上が感染。ウクライナでは過去6ヶ月で4万人以上が感染している。マダガスカルでは過去6ヶ月で6万人弱が感染し、昨年10月以降、少なくとも922人が死亡したとWHOが報告している。

麻疹は極めて感染力が強いウィルスで、これまで数多の死者を出してきた。麻疹ワクチンが生み出されてから、世界は麻疹の根絶に向けて戦いを続けてきた。

だが日本では大流行して学級閉鎖が相次いだ2007年(この年まで正確な統計がなかった)と、1万人を超える感染者報告があった2008年以後は減少していること、また麻疹は一度罹ってしまえば抗体ができて二度と罹ることがないことから、麻疹の怖さに対する一般的認識はかなり呑気なものだ。

だが麻疹は20世紀まで世界中の感染症でもっとも死亡数の多かった、かなり危ない感染症だ。

 

麻疹(はしか)とは

麻疹ウイルスに感染すると10~12日間の潜伏期間を経て、38~39℃程度の発熱、鼻水、咳などの風邪と似た症状が2~4日間続く。

その後、一旦下がったかに見えた熱が39.5℃以上まで上昇して全身に赤い発疹が広がる。この発疹は5、6日続き、その後徐々に発疹が引いていき回復する。

このあいだに約3割の患者が、肺炎や脳炎の合併症を起こす。これが原因で死亡することがある。特に死亡数が多いのは、0歳から4歳ぐらいまでの乳幼児だ。

また、妊婦が感染すると、早産・流産の可能性が高まり、胎児の発育異常なども起こり得る。

また、1歳未満で麻疹にかかると、回復から2~10年後に神経内に潜んでいた麻疹ウイルスが再び活動し、「亜急性硬化性全脳炎」になることがある。

この脳炎にかかると学習能力や記憶力の低下、歩行障害が始まり、数年から十数年で多くが死に至る。発生確率は数万人に1人程度だが、一旦発症すれば決定打となる治療法はない。

麻疹は死に至る病気

江戸時代には、確認できるだけで13回の麻疹の大流行があり、1862年の流行では江戸だけで、約24万人の死者が記録されている。「生類憐みの令」で有名な第5代将軍・徳川綱吉も麻疹で死んだ1人で、64歳で麻疹で命を落としている。

麻疹ワクチンが世界に広まったことで、麻疹で死亡する人の率は大きく減少している。世界保健機関(WHO)の報告では、2000年の麻疹の感染者は約3000万人と推定され、そのうち死亡者は全世界で55万人いた(ただし未報告数がかなりあると思われる)。死亡率は1.8%だ。

その後、麻疹による死亡者の数は減少し、2016年に初めて10万人を切り、約9万人に減った。そして、医療ワクチンや医療の発展により死亡数や死亡率は減少し、先進国では近年、麻疹に感染した患者数のうち、麻疹が原因で亡くなる人は1000人に1人(0.1%)程度まで減っている。

だが、安心はできない。日本は先進国の中で、なぜか麻疹で死亡する人の比率が比較的高い。日本で麻疹の患者が全例報告となった2008年以降の麻疹患者の死亡率を、厚生労働省の人口動態統計などを使って割り出すと、驚くべきことが分かる。

2008~2017年に麻疹による死者は2008年、2009年、2011年、2013年、2014年に発生している。その死亡率は2011年と2014年は0.2%、2009年が0.3%、2013年は0.9%。2013年は111人に1人が亡くなっている計算になり、決して看過すべき状況ではないのだ。