この春からお弁当を作り始める人はもちろん、毎日作り続けているベテランさんにもお弁当にまつわるお悩みはあるはず。そんなお悩みを解決しながら、楽しく、美味しいお弁当を作るコツを、本日からスタートする新連載【校閲母さんの「おべんたふるらいふ」】でご紹介していきます。

“お弁当作りを通して日々の生活もワンダフルに”という思いを込めたこの連載の著者、大橋日登美さんは校閲者として働く2児のお母さん。文章の校正という細かい仕事柄、おかずの品数や配色、栄養バランス、詰め方など、細部にまで気を配りながら家族のために毎日お弁当を作り続けていたら、どんどんスキルアップしていき、食に関する資格まで取得。今では料理教室の講師をやるようになってしまったというお弁当マスターなのです。

その実力は、大橋さんのInstagramを見てもわかります。SNS映えするお弁当の写真と日々の出来事をクスっと笑える文章で綴った投稿内容。さらに、日々寄せられるフォロワーさんからの質問への返答も丁寧でわかりやすい。“これをSNSだけでお届けするのはもったいなくない?”と、今回FRaUでの書きおろし連載をお願いしたのです。そんな大橋さんですが、最初からお弁当を器用に作れたわけではなく、失敗もたくさんしたとか……?

週末の作り置きを始めて
忙しい平日が楽に回るように

書店に行くと、たくさんの「作り置き」の本が並んでいます。

(どうしてこんなに同じような本ばかり?)

私はそれらを手に取ることもなく、ぼんやりと眺めていました。

高校生になった長女のお弁当を毎日作るようになって初めて、なぜあんなに「作り置き」の本が売れているのか、よく分かるようになりました。

お弁当って、夜ごはん作りより難しいですよね。小さな箱の中に、多種類のおかずをバランスよく詰めなければいけない。

(時間のない朝に何種類も作るなんてぜったい無理! 他のお母さんたちは、どうやって毎日のお弁当作りをこなしているんだろう?)

そんな疑問を持ちながら調べると、お弁当の達人と呼ばれる方たちはみんな、週末に「作り置き」をしていたのです。

なんだか目が覚めたような気持ちでした。

(――あの本はこのためだったんだ。でも、本当にこんなにたくさんの品数を一気に作れるの? 日持ちは大丈夫なの?)

恐る恐る、そうしたお弁当界のカリスマたちのマネをして週末に作り置きを始めると、毎朝のお弁当が簡単にできるうえに、忙しい平日が楽に回るようになりました。

出版社の校閲部で働く「文字拾い」の私は、毎日残業があります。朝は8時半から働き、帰宅は19時過ぎ。いくら料理が好きでも、疲れて帰った日には気合いを入れて調理をする気力がありません。でも作り置きを活用すると、毎日のお弁当作りだけでなく、夜ごはんもあっという間にできるんですね。

作り置きは忙しい人にこそ、必要なものだったのです。

長女は大学に進学してひとり暮らしを始め、今度は高校生になった息子のお弁当作りが始まりました。夫、息子、私の【3人分のお弁当作り】は4年目に。今では、作り置きおかずは私の生活に欠かせないものになりました。

料理をするうちにもっと知識を増やしたくなり、上級食育アドバイザーや薬膳インストラクターの資格も取り、それがきっかけで料理の仕事のご依頼をいただくことも増えました。けっして器用ではない私が……と料理ができなかった過去を振り返ってふしぎな気持ちになります。

この連載では、作り置きおかずやそのアレンジを、隔週で数種類ご紹介していきます。たくさん失敗しながらも、いえ、たくさん失敗したからこそ分かった「料理本に詳しく載っていない、でも知りたかった調理のコツ」や「日持ちの秘訣」「味つけの組み立て方」などを、皆さんにお伝えしていきたいと思っています。

料理をするのは面倒だったけれど、おいしいものは食べたかった、あの頃の私。どうしたら楽に、おいしく調理できるのか、ちっとも分かりませんでした。ちょっとだけ成長した「お母さん歴20年」の今の私なら、あの頃の私の疑問に答えられるような気がしています。

まず何より大切なのは、とにかく台所に立つこと。

料理の上手さは場数に比例します。手を動かすうちに、ある日、いつの間にか――料理が楽しくなっている。

連載を通してご紹介する「週末の作り置きおかず」を、一緒に始めてみませんか?

作り置きの「日持ち」問題、
3つのルールで解決します!

第1回でご紹介する食材は【ほうれん草】です。日持ちしない代表選手の「葉物」も、ちょっとしたコツで長持ちさせることができます。まずは大事な三原則。これはすべての作り置きに共通する原則なので、覚えておいてくださいね。

【日持ちの三原則】
1.保存容器はしっかり消毒
2.水けを除く
3.酢より油が有効

《1.保存容器はしっかり消毒》は、作り置きおかずの生命線といってもいいくらい大事な作業です。これを徹底することで、日持ちが3日は延びるのです。この効用は、暑くなる季節ほど実感できますよ。

熱湯消毒でももちろんいいのですが、毎回容器をグラグラ煮立てて水けをきる……という作業は面倒ですよね。私がおすすめするのは、除菌スプレーを使った消毒方法です。

左:ドーバー「パストリーゼ77」右:フマキラー「キッチン用 アルコール除菌スプレー 」

作り置きおかずを詰める前に、容器にシュッと一拭き。あとはキッチンペーパーで拭って、できたおかずを詰めるだけ。蓋は完全に冷めてから閉めます。

iwaki「パック&レンジ」オーブンにもレンジにも使える耐熱ガラス容器。中が見えるので、冷蔵庫から取りだすときも便利です。

《2.水けを除く》は、ほうれん草のような葉物の場合、とくに重要です。水けが雑菌を呼び込み、足を早くするほか、味も水っぽくなり、時間が経つにつれおいしくなくなります。ほうれん草は茹でたらしっかりと水けを絞りましょう。

最後に3.酢より油が有効》について。日持ちには酢を使ったマリネがいちばん、と考える方が多いと思います。酢はたしかに日持ちを延ばしてくれるのですが、じつは酢よりも油のほうが、保存に関しては効力を発揮するのです。

今回ご紹介するレシピはごま油やバターを使うため、保存に効くだけでなく、ほうれん草にこくも加えてくれますよ。

また、まとめて作り置きをする際に、私は【途中の作業まで一緒で、味つけだけを変える】方法を使います。ほうれん草なら茹でて水けを絞るところまで、ポテトサラダなら蒸してマッシュするところまで一緒。

味つけだけ変えるのは、それほど手間ではありません。こんなふうに作ると、一度に2、3種類のおかずが簡単にできあがります。