京都旅行で1時間鴨川を眺める

わたしは生まれも育ちも日本だから、「せっかく旅行に来たならいろんなところに行きたい」「効率よく観光地を回りたい」と思う。旅館ならともかく、ホテルなんて寝に帰るだけなんだから、そんなにいいところじゃなくてもいい派だ。しかしそういうテンションでドイツ人と旅行すると、意識のちがいを感じることになる。

日本に来たドイツ人の友人に対し「あれもこれも案内したい!」と張り切っても、決まって「まぁまぁのんびりしようよ」と言われるのだ。まったりしたがるドイツ人に対し、「時間がもったいないよ〜!」とワナワナする。

半年ほど前、彼と日本に一時帰国した際に訪れた京都では、「お寺はさっき見たから休もう」と彼は小1時間まったりと鴨川を見ていた。いや、嵐山には見所がたくさんあるから! 歩こうよ! と思うのだが、「旅行中は疲れたくない」とのこと。

確かに、鴨川も素敵なんだけど…… Photo by iStock

ドイツ人の女友達とベルリン旅行したときもそう。「休憩」と言って、彼女は瓶ビールを買って国会議事堂の芝生の前に腰を下ろした。そんなのいつでもどこでもできるのに! と思うが、彼女は「せっかくの旅行だからイライラしたらもったいないよ!」と笑顔で言うのである。

この「もったいない」の感覚のちがいは、いまだにちょっと慣れない。家族や日本人の友人と詰め込み旅行をしたほうが、疲れはするが「旅行している」感があるのだ。

大切なのは「ストレスを貯めない」こと

ドイツではこのせわしない「日本式旅行」は、日本いじりの定番のひとつ。たった数日間の旅行で観光地を飛び回って写真を撮り、職場のお土産を買って帰り、翌日からふたたび仕事をする姿は、ふしぎに映るらしい。ドイツ的な考えからすると、弾丸旅行や弾丸ツアーは「ストレスをために行くもの」なのだろう。

もしかしたら日本人は、旅行ですら「新しいものを手に入れてすぐに消費する」対象なのかもしれない。見て、買って、食べて、写真に収めて、お土産を抱えて帰る。じっくりとその国の文化を観察するとか、なぜ世界遺産に認められたかを調べるとか、そういうのはそんなに重要じゃない。現地でたくさんのイベントを「こなす」ことが「充実」。のんびりまったりすると、「もったいない」

ドイツ人は、旅行でむしろ「充電」する。朝はまったりと身支度をし、公園のベンチで休み、現地の人が行く穴場レストランでワイン片手に2時間のランチを楽しみ、ホテルで休憩し、夜はまたどこかでのんびりと食事。ストレスを溜めることが「もったいない」

わたしみたいに、時間を気にしてカリカリしながら移動したり、足が棒のようになるまで歩き回ってホテルのベッドに倒れこんだりはしないのだ。いや、する人もいるのかもしれないけれど、少数派だろう。

旅行中はとにかくストレスを溜めないことが重要で、快適さとリフレッシュのためにお金を使う。そしてふだんは、モノをひたすら使い続け、余計な消費はせずに貯めておく。

新しいものを消費するのは楽しいし、せっかくの旅行ならいろいろ見たいと思う。でもドイツ人みたいに、モノを大切にして、ゆったりと充実した時間のためにお金を使うのも、それはそれで結構心地いいのかもしれない。