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幼少期に父親から暴力を振るわれ続けた男性が性犯罪加害者になるまで

加害者はどこへ行くのか

良き夫、良き父親の「裏の顔」

「思い当たることなんてありません。娘ふたりをとても可愛がっていたし、夫婦仲が悪いわけではありませんでした。性生活も普通にありました」

佐藤雄一(仮名・40代)は、3件の強姦致傷罪で逮捕された。夜道をひとりで歩いている女性を車内に連れ込み、騒ぐと痛い目に遭わせると脅しながら強姦する行為を繰り返していた。

妻は、事件のショックで精神のバランスを崩してしまった。10年以上連れ添った夫に想像もつかない「裏の顔」があった事実を知った以上、夫婦を続けることはできなかった。

70歳になる雄一の両親は、エリートコースを歩み、幸せな家庭を築いていたはずの息子が起こした事件によって、突然、地獄に突き落とされた。

世間からの白い目に怯えながらも、息子を見捨てることはできないと思った。片道3時間以上をかけて、なんとか息子が勾留されている警察署に辿り着いた。

「息子が大変ご迷惑をお掛け致しました。本当に申し訳ございません……」

警察官ひとりひとりに深々と頭を下げて謝罪する老夫婦の姿は、あまりに気の毒で見るに堪えなかった。

良き夫に良き父親、親にとっても自慢の息子だったはずの男に一体、何が起きていたのか。

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「こうなったのは、あんたらのせいだよ!」

雄一は、事件を起こした原因は両親にあると言い、面会の度に両親を罵倒していた。

「急にそんなこと言われても、私たちとしては何がなんだかわかりません。この先、息子とどうかかわっていけばよいのか…」

息子から投げつけられる言葉に思い当たる節はなく、両親はただ困惑した。雄一は結婚してからほとんど実家に顔をみせることもなく、事件を起こすまでどのような暮らしをしていたのか、親兄弟にも詳しいことはわからなかった。

両親の代わりに面会に来た筆者に、雄一は丁寧に挨拶をした。雄一は、起こした事件からは想像もつかないような穏やかな風貌で、どこにでもいそうなごく普通の男性だった。

 

「妻子まで不幸にしてしまったことも申し訳なく思っています。彼らには何の罪もありません」

裁判では、雄一が事件を起こした動機について、単純な性的欲求として片づけられようとしていた。しかし、両親との関係が少なからず事件に影響を与えていることは間違いなかった。雄一は、筆者と面会を重ねるうちに、少しずつ事件の核心と思われる事実を打ち明けてくれるようになった。