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給料未払い、電気も止められて…TENGA社長の「壮絶過去」

松本光一社長に聞く
独創的な自慰グッズで有名な「TENGA」。誰もが持つ「性」がアンダーグラウンドなものでよいのかと、性と真面目に向き合う製品を開発・販売している。口下手な松本光一社長(51歳)に熱い思いを聞く。

いかがわしくないグッズを作る

'03年に自費で研究を始め、2年をかけてようやく納得がいく試作品ができました。ところが、既に資金は尽きかけ、製造に必要な樹脂の金型が作れない状況に陥っていました。

性欲は、誰もが持つもの。それを豊かで、誰もが楽しめるようにしたい。その思いも届かないのかと諦めかけました。この時、私の話を聞いた金型屋さんが、「わかりました。お金は成功したら払ってくれればいいです」と言ってくださったのです。

これがなければ、TENGAが誕生することはありませんでした。

 

ビジネスには理論も理屈も重要でしょう。でも、情熱がなければそれは伝わりません。その後、TENGAが社会に受け入れられていったのも、強い情熱があったからだと思っています。

25歳ごろからクラシックカーの整備をしていました。お客さんは皆さんクルマへの愛着が深く、車を一度バラして、1年かけて丁寧に組み上げると非常に喜ばれました。その後、中古車販売の営業に転職し、いい成績もあげたのですが―私の内側からは沸々と「何かものが作りたい」、「今までにないものを生み出したい」という思いが湧いてきたのです。

ただ、何を作るかはまったく未定でした。そこでホームセンターや家電量販店で今、何が売られているのかを何日もかけて観察したのです。一日中、店を回り、この製品は誰を喜ばせたいのかと考えました。

ある日ふとアダルトショップに入ってみたところ、強烈な違和感を持ちました。ブランド名はおろか生産国表記すらない商品も多く、誰もが持つ「性」が淫猥な扱いをされていたのです。恥ずかしくない、いかがわしくない自慰グッズを作るという決意はこの時生まれたのでした。

2005年ごろ、試作品を作る松本氏。当時、一軒家を借りてオフィスにしていた。

新しいものを作るために必要なことがあります。まず、事前に考えすぎるより、ある程度考えたらもう動き出して、状況を確かめて調整することです。作るものが明確に見えていれば、動きやすいけれど、新しいものは生まれない。

逆に、大きなビジョンを描いていても、考えるだけでは着地点が見えてこない。行動することで、視界は少しずつ開けます。

ただし市場の研究は綿密にしたほうがいいと思います。現状を知らないと、半年くらい経って、「自分が作りたかったものが既に売られている」と気づくことがあるんです。

私は商品を端からぜんぶ買って試し、分解して、修正すべき項目を山ほど挙げてから開発を進めました。