組み合わせ無限大! 「ニオイ」を測って世界平和を達成する方法

科学技術と社会をつなぐ架け橋に!
清水 修, ブルーバックス編集部

「だから、将来、スマホなどに実装して持ち歩くMSSを作ろうとしたならば、GPSと連動させて、その場所・その時間の大気の状態などをパラメータとして加える必要も出てくるかもしれません。

このMSSの最終的な形のひとつはパーソナルユースだと思っています。その場合、MSSを携帯する持ち主の嗅覚とどうリンクさせていくかということも重要になると思います。スマホの中の『鼻』がだんだん持ち主の鼻の感覚に近づいていくようにAI学習させていく感じです。

そのためには持ち主が今、置かれている環境のパラメータも含めて解析する必要があるわけですね」(吉川さん)

スマホの中に『鼻』を持てる日がやってくるのか。まさにエンハンスメント。

ニオイ計測で目指す世界平和

なんていう夢のある話を廊下で聞いていたら、吉川グループの研究発表用ポスターを発見した。え? 最終目標は「世界平和」?

「そうです。私たちのニオイ研究の最終目標は『世界平和』。歴史学の先生方と話すと、紛争の頃の日記などには『あいつら(敵)は、くさい』という記述があったりするそうです。ニオイって今までは客観的な指標がなかったので、主観的にしか判断できなかったんですよね。

ニオイの客観的な指標を作って、ちゃんと計測できるようになったら、ニオイに対して理性的な判断がしやすくなります。ニオイは感情に直結しているので、感情的な行動を少しでも減らすことができるかもしれません。

そうやって理性を取り戻すことで、人間は冷静になり、現状よりは少しでも世界平和に近づくはずだと考えています」(吉川さん)

吉川元起「ニオイで世界平和を」ポスターが掲示されていた(撮影:長濱耕樹)

ニオイ計測で目指す世界平和! これはまた大きな目標を掲げたものだ。主観から客観へ。考えてみれば、社会に客観的な視点を示唆し、理性をうながすことは、科学者の社会的使命としてもっとも大きなものだろう。

MSS(撮影:長濱耕樹)

MSSの研究は、まさに科学技術と社会をつなげる大きな架け橋だった。人が理性を取り戻すためのツールを実現するために、WPI-MANAの若手ホープたちは、今日もつくばの地でニオイの研究を続けている。

MSS(撮影:長濱耕樹)

取材協力・協賛:
世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)
国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)

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