できたら絶対楽しいのに!

ええ私、威張ることじゃありませんが、跳び箱が飛べないくらいだからスケートだってできませんよ。それでもスケート靴を履いてリンクに出てみましたが、埴輪のように固まってぴくりとも動けませんでした。他の方達はどこかで合宿してきたんじゃないのと疑うほどの見事な滑りで、くるくる回っている人までいました。酒井さんもかなり安定した滑りで、とても楽しそうでした。編集の女子達が固まっている私の手をひいてリンクを何周かしてくれました。それがとっても嬉しくて楽しかったです。みんな大笑いして、愉快な時間を過ごしました。

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スポーツっていい。そのとき私は思いました。心地よく体を動かすと自然と笑みがこぼれるし、百の言葉をつくすよりその場にいる人々と打ち解けることができます。初対面の酒井さんとお互い硬くならずに食事ができたのも、いきなりスケートをしたからだと思います。

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酒井さんはご本のイメージ通りにフラットでとぼけたテイストがある方で、私はすぐ大好きになりました。大勢で中華の丸テーブルを囲んで食事をしているとき、スポーツ好きの酒井さんが、「機会があったら柔道をやりたい」というようなことを仰いました。体と体をぶつけるようなスポーツは楽しいんじゃないかという話の流れだったと思います。

わかりますわかりますその気持ち、大人になると恋愛以外で他人の体に触ることは少ないし、畳にドーンと受け身を取ったりしたら爽快だと思いますと私が答えたら「やりたいですよね! 山本さん、本当にやりませんか!」と酒井さんが満面の笑みで言ってくださった時、ああああああっ! と私は頭を掻きむしって叫び出したい気持ちになりました。もし私に人並みの運動神経があれば! そうしたら酒井さんと文芸女子柔道部をつくれるのに。そうしたらすごく楽しいに違いないのに!

でも私にはできそうもありませんでした。努力すればできないことはないと思います。でも私にはたぶんできない努力です。大袈裟な話ではなく、私はスポーツをしない人生を選んだのだったと改めて思い出しました。学生の時の体育は「やりたくないのにやらされていた」わけですが、大人になった私は「やらないことを選んだ」のです。うな垂れた私を慰めるように「じゃあ合唱はどうでしょう。第九とか?」と酒井さんは代替案を出してくださいました。ありがとうございます。私、すごい音痴ですけど努力します。