この「宇宙」にはあなたのクローンが無限に存在する...驚くべき結論

宇宙論のいまが分かる
須藤 靖 プロフィール

我々の宇宙の外に広がる宇宙

ではこの有限体積の地平線球(=我々の宇宙)の外はどうなっているのか。そもそも、その領域の境界は、現在の宇宙の年齢で決まっているだけである。

138億年という現在の宇宙の年齢が、物理定数の組み合わせから導かれるなど、この宇宙にとって何か特別な意味をもつ値でない限り、それはたまたま我々人類が生きている時刻に対応する以上の意味はない。

したがって、その境界の内側と外側で、なにかが違っているはずはなく、むしろそれらはまったく同じだと考えるほうがずっと自然だ。

とはいえ、その外の領域がどこまで広がっているかは、わからない。この「わからなさ」を反映して、もっとも単純な一般相対論的宇宙モデルでも、無限体積と有限体積の2つの可能性がありうる(ただし、有限体積の場合でも、どこかに果てや境界があるのではなく、宇宙空間をぐるっと廻るといつの間にか元の場所に戻ってくるという性質をもつ)。

現在の観測データから推定すれば、ほぼ無限体積の可能性が高いとされている。ただし、数学的世界とは異なり、現実の自然界に数学的な意味での無限大が存在するのかどうかを考えはじめると、これまた頭が痛くなる。そこで、ここでも

 仮定D: 宇宙の体積は無限大である

を認めてもらうことにしたい。

クローン宇宙は実在する

さて、以上で説明した事実AとBにもとづいて、仮定CとDを認めてもらえれば、我々の宇宙とまったく同じクローン宇宙が別のどこかに存在することが結論される。

その証明は、無限に続くランダムな数字の列の中には、ある特定の有限の数字の列が必ず繰り返し登場することの証明とまったく同じである。

世界はデジタルデータで記述できる宇宙は有限の数字列で記述できる

たとえば、ランダムに数字を選んで、「1」が出る確率は10分の1である。したがって、数字を10個並べればその中には平均的には「1」が一回登場することが期待できる。

むろんこれはあくまでも確率に過ぎないから、そうでない場合もあろう。しかし逆に、N個並んだランダムな数字の中に「1」が一度も現れない確率は0.9Nであるから、N=100なら3万回に1回以下、N=1000なら1046回に1回以下となり、現実的には起こりえない。

仮にそのようなことが起こったとすれば、その数字はランダムに選ばれたものではなく、意図的に「1」を外すように設定されていると考えるべきだ。

この考察は、「1」ではなく、「12」、「123」、「1234567890123」など任意の有限な数字の列についても全く同様に拡張できる。

その場合、確率的にその組み合わせが現れるために必要となるNの値も格段に大きくなるとはいえ、有限の数字の列が必ず出現するという結論に変わりはない。

したがって、有限の数字列で記述し尽くされる我々の宇宙(仮定C)は、無限体積の宇宙(仮定D)のなかに、繰り返し、しかも無限個存在するはずなのだ。

そしてそれらこそ、我々の宇宙と完全に同一のデジタルコピー、すなわちクローン宇宙なのである。