この「宇宙」にはあなたのクローンが無限に存在する...驚くべき結論

宇宙論のいまが分かる
須藤 靖 プロフィール

我々の宇宙

宇宙は今から138億年前に誕生したと考えられている。また世の中では、情報も含め、あらゆるものが光の速度を超えて伝わることはない。

このために、現在の我々が知り得るのは、138億年かけて光が到達できる有限体積の領域に限られる。これは、我々を中心とした半径138億光年の球にほかならず、宇宙の地平線球と呼ばれている。

宇宙の地平線球宇宙の地平線球のイメージ

天文学者が用いる「我々の宇宙」とは、ほとんどの場合、この宇宙の地平線球をさしていると考えて良い。ここで強調すべきなのは

 事実A: 我々の宇宙の体積は有限である
 事実B: 我々の宇宙に存在する素粒子の個数は有限である

の2点だ。

現代物理学は、自然界のすべての物質は素粒子によって構成されていることを明らかにした。これは、地上実験によって検証されたものとはいえ、あまねく宇宙全体についても成り立つものと考えて良い。

したがって、Aを認めれば、Bも同時に成り立つと考えてよかろう。その意味において、この2点は、「事実」に分類しておこう。

ところで、素粒子は、6種類のクオーク、6種類のレプトンに加えて、力を媒介する粒子など、いくつかの種類がある。しかしながら、それらは仮に独立に取り出して比べることができたとしても、それぞれ厳密に同じ粒子なのである。決して区別することはできない。

この意味において、我々の宇宙の性質は、空間のどこにどの素粒子を配置するかという自由度によって完全に規定し尽くされると考えて良いのではあるまいか。

この予想は、古典力学に基づく決定論的視点からは説得力を持つ一方で、確率的解釈が入り込む量子力学を考慮しはじめると、途端に難しくなる。

この予想の真偽は自明でないどころか、おそらくいくら議論しても決着のつかない魅力的な疑問だと思う。というわけで、そのような泥沼の議論に陥ることを避け、本稿では

 仮定C: 我々の宇宙は有限個数の自由度だけで完全に記述し尽くされる

を採用して、以下に進む。