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罠、兵糧攻め、自爆…いまこの瞬間も続く植物の「戦争」をご存じか

植物は「ボーっと生きて」なかった!
おとなしそうに見える植物たちも、日々戦っている! チコちゃんが叱る間もなく展開する、獰猛な病原体との熾烈なサバイバルレースを、ブルーバックスの好評新刊『植物たちの戦争』より中継いたします。

1gに20億いる「世界の真の覇者」の攻勢

我々、動物、そして植物も同じですが、そこから「生」が失われれば、瞬く間に、その体は無数の微生物たちの餌食となってしまいます。

この厳粛な事実は、「生きている」ということが膨大な数の「微生物たちとの戦い」に他ならないことを、私たちに教えてくれます。

肉眼で見える世界は、動物が闊歩し、植物が地表を覆う、多細胞生物たちの王国のように映ります。しかし、畑の土を1gほど取れば、そこには100万種に迫る多様な微生物たちが、数にすれば20億は棲んでいると、2005年の「サイエンス」誌には報告されています。

わずか数gの土の中には全世界の人類の数に匹敵する微生物がいるのです。

この目に見えない「世界の真の覇者」たちが、日々、私たちにも、そして植物にも、襲いかかってきます。

日の光を浴びて穏やかに暮らしているように見える植物の印象からは、縁遠いものにも感じますが、油断すれば、すかさず侵入してくる無数の微生物たちと、植物は日々「戦争」をしています。

PlantPhoto by Matthew Henry from Burst

分子レベルの囮で敵に「倍返し」

近年の生命科学の発展によって、そういった植物と微生物たちの戦いの姿が、分子レベルで徐々に解き明かされてきています。それは静的な植物のイメージとはかけ離れた、ダイナミックで、巧妙で、驚きに満ちたものでした。

一つ例を紹介しましょう。

ちょっとビックリするような話ですが、植物は侵入を試みてくる病原微生物を撃退する手段として、細胞の中に分子レベルの囮(おとり)を使った罠を仕掛けています。

植物の細胞には、近づいてくる微生物を見つけるための「監視カメラ」のようなものが備わっていますが、侵入者である微生物はこっそりと忍び込むために、その「監視カメラ」の部品を壊したり、その後ろにある配線を切ったりしてきます。敵もさるもの、なかなか凶悪です。

それに対して植物が進化の中で生み出したものが「ダミーの監視カメラ」、つまり囮です。

人間の住居でも、ダミーの監視カメラを設置するだけで、一定の防犯効果があるようですが、植物の「ダミー」はただのこけおどしではありません。

凶悪な微生物がいつものようにこの「監視カメラ」を破壊しようとすると、この「ダミー」は警察への通報ベルに直結しており、触るや否やすぐに警官がかけつけ、御用となるのです。凶悪犯の手口を逆手にとった、実に巧妙な罠です。

また、巧妙というだけでなく、これが戦略的に優れているのは、防御反応(警察への通報のような)を開始するのに、個々の敵を峻別して認識する必要がないという点です。