地元産品「ブランド化」の重要性

転機は、豊岡市内の鞄メーカーが多く所属している兵庫県鞄工業組合に加盟したことだ。横のつながりや情報が欲しかった、と宮下さんは語る。それまでは、組合には加盟していなかった。

「想像以上に得るものが大きく、たくさんの学びを得ました。他の加盟社の工場見学をさせてもらったりして、これから生き残るために何が必要になるのか、ヒントをつかむことができました」

内職を軸とした古くからのモノづくりから、工場生産にシフトしたのも、この組合での学びがあってこそだった。本社の近隣の空き家を工場や倉庫として買い取り、今では社員は16名になった。

「組合の先輩たちは、『若い人間にいろんな経験をさせよう』という考え方なんです。今では、『ブランド委員長』を務めています」

2004年、豊岡の鞄産業はどん底の状態を迎えるが、2006年に鞄工業組合は「自分たちで積極的に情報発信しなければ、地場産業は成り立たなくなる」との危機感から、国の地域ブランド認定を取得した。それが「豊岡鞄」というブランドだ。

豊岡鞄のブランドロゴマーク

ただし、豊岡の鞄産業従事者すべてがこのブランドを使えるわけではない。認定企業になりたいと手を挙げ、さらに製品が「豊岡鞄」の名に足るかどうかの審査を受けなければならない。宮下さんが率いるナオトも認定企業のひとつだが、その認定の実務を司るのがブランド委員だ。「豊岡鞄」の仲間入りを果たせる鞄は、年間わずか200型ほどしかないという。

「認定企業が有志で、全国の百貨店などで豊岡鞄を販売する催事を開くようになったんですが、これがまた大きな学びになりました。鞄を作るだけでなく、実際に売り場に立って、お客さまの声を聞くことができるようになったからです」

また、同社はプライベートブランド「直帆布」も立ち上げた。気づいたのは、デザインとモノづくりの関係の深さだ。いくら素晴らしいサンプルが完成しても、それが量産に適しているとは限らない。

「プライベートブランドをやってみて、大きなメーカーの大変さがわかりました。この経験が、今ではOEMの仕事にも大いに活きています。

豊岡には、『変わらなきゃ』と考えている前向きな仲間が多い。やっぱり、じっとしていても何も動かないですから。まだまだ、やれることはたくさんあると思っています」