受講費用は年126万円。これ以外に、県外から来れば豊岡で生活するための費用も必要になる。定員は10名とした。

「こんなに費用がかかるのに、本当に来てくれるのか、という声があちこちで上がりました。そもそも豊岡はOEM(委託製造)の産地。鞄の産地としてはあまり知られていないんじゃないか、と」

ところが、蓋を開けてみると初年度から6名の応募があった。しかも、うち5名が市外出身者。以降、受講者数は少しずつ伸び、昨年度は12名に。5年間で43名の卒業者を輩出し、うち市外出身者が実に40名。このうち29名が市内の鞄企業に就職した。

「鞄作りの専門学校は、大阪などにもあるんです。でも、わざわざ豊岡に来てくれるんですね。本場で徹底的に学べること、また就職先が見えるということも大きいんだと思います」

地元就職者の「生の声」が聞ける

卒業を控えたスクール生が、アルチザンアベニューの3階で学んでいる光景を見せてもらった。20代、30代の若者ばかりだ。男性8名、女性4名。いきいきと、そして楽しそうな表情で、それぞれの作業に向かっていた。

彼らが作った作品が、卒業記念に豊岡市役所にも展示されていた。個性に溢れたオリジナルバッグがずらり。とても素人が1年間で習得したとは思えない出来映えだった。

アルチザンスクールの卒業生の作品

スクールの募集は基本的にウェブ上で告知しているが、最近は新聞をはじめマスコミで取り上げられることも増えてきたためか、問い合わせは多い。定員割れどころか、今では応募者が定員を上回り、面接による合否審査も行われている。それなりの費用がかかるだけに、選考する側も慎重になるという。

豊岡まちづくり(株)で募集や運営に関わっている、紙谷芳明アルチザンマネージャーはこう語る。

「入学にあたっては、スクール見学としてアルチザンに必ず来ていただいて、すべてを見ていただくことにしています。どんな場所で学ぶのか。どんなことを学ぶのか。すべて知っていただくのに、2時間ほどかかることも少なくありません。その上で、決断いただいています」

スクール生と卒業生とが交流する場もあり、これがまた好評だという。というのも、豊岡の鞄メーカーに就職した卒業生の声は、鞄職人を目指す若きスクール生にとっては、他では得られない貴重な情報だ。逆にいえば、採用した地元企業がいい加減なことをしていたら、卒業生から就職先としては選んではもらえない。山﨑社長はいう。

「スクール生とは、マッチングの機会を設けるようにしていますが、基本的にスクール生の希望が第一です。就職したい会社に応募することができます」

市内での就職を選ばなかった卒業生も、自分の故郷で職人を目指すなど、何かしら鞄に関わる仕事に就く割合が多いという。山﨑社長が続ける。

「ですから、とてもやる気を持っている人が来ているということです。これが、みなさんのいい刺激になっていますね」