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今年の中国「年に一度の国会」がまったく盛り上がらなかったワケ

イデオロギーよりも「トランプ対策」

アメリカの見えない圧力

まさに「しゃんしゃん大会」、まるで「ヘビに睨まれたカエル」の如しだった。世界に君臨する「強国」のはずが、すっかり「軽量級」になってしまったものだ。

3月5日から15日まで、全国人民代表大会(国会に相当)が、北京の人民大会堂で開かれた。中国では一年でこの時期しか、「国会本会議」が開かれない。普段は、中国共産党中央委員会(習近平総書記)が国の方針を決めて、それに従って全国人民代表大会常務委員会が法律を作り、国務院(中央官庁)が執行する。

そのため、中国には日本のような国会での論戦はなく、本会議は「省略」というわけだ。社会主義ならではのスピードで、共産党の政策を実行に移していくシステムで、かつ、一つ一つ順を踏んで「民意」に向き合わない代わりに、イギリスのBrexit騒動のような「民主主義の混乱」を未然に防いでいる。一言で言い表すなら、「中国の特色ある社会主義」とは、中国伝統の皇帝制度の延長であり、変形であり、最新形でもある。

私は連日、中国中央テレビのインターネット生中継で、全国人民代表大会を見ていた。11日間つぶさに観察していて、今年の大会には、参加していない「影の存在」が、大きくのしかかっていることに気づいた。それは、アメリカのトランプ政権である。

周知のように、中国は現在、トランプ政権と貿易戦争を激しく展開中である。そんな中で、中国は今年の大会で、二つのことを迫られた。

一つは、中国経済は今後とも健全に発展していくと、内外に示すことだ。世界の証券市場や金融市場では、「チャイナ・ショック」なる言葉も飛び交い始めているからだ。

そこで、失速中の中国経済を「V字回復」させるため、中国政府は持てる政策を総動員していくという決意をアピールした。具体的には、インフラ投資を増やして地方の雇用を確保する、銀行を刺激して中小企業への融資を拡大させる、減税や補助金を実施して国民の消費を喚起するといった政策である。

もう一つは、トランプ政権に「揚げ足」を取られないような慎重な議事運営を迫られたことだ。

2015年の全国人民代表大会を受けて国務院(中央官庁)が発表した『中国製造2025』(2025年までの製造業の目標を定めた指針)は、中国側は当時、まったく予期していなかったが、その後、トランプ政権に激しく攻撃された。

「半導体の国産比率を2025年までに7割にする」といった『中国製造2025』に明記された国家目標は、それを実行するために政府が企業に多額の補助金を出すなどして、世界の健全な市場経済のルールに反するというのが、トランプ政権の主張だ。

そこで、『中国製造2025』のようなアメリカが非難してきそうな議論を、今回は極力排除したのである。一例を挙げれば私は、昨年議題に上っていた「軍民融合促進法」(人民解放軍が必要と判断したすべての技術の提供を企業に義務づける法律)の決議に注目していたが、完全に引っ込めてしまった。

こうした「アメリカの見えない圧力」によって、今年の大会は、中華人民共和国憲法15条で定めた「国家は社会主義市場経済を実施する」の市場経済の方に、よりスポットライトが当たった。昨年の大会のような習近平総書記主導の社会主義的イデオロギーが影を潜め、市場経済を発展させていくための議論や発表が多かったのだ。

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