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現実を食べて生きる。食べ物とひとの関わりとは?

忘れてしまいたいのに、忘れない味

「生きる」をどう受け容れるか

『忘れない味 「食べる」をめぐる27篇』の刊行にあたって、やはり「イメージの文学誌」に触れないわけにはいかない。

北宋社刊、全5巻。いずれも菊版、カバー装、各千八百円。

初めて手に取ったのは『紅い花青い花』(吉行淳之介監修 昭和53年刊)と『物食う女』(武田百合子監修 昭和53年刊)の2冊で、数年後、『動物の謝肉祭』(澁澤龍彥監修 昭和55年刊)を買い求めた。

 

ほかに『幻想飛行記』(埴谷雄高監修 昭和54年刊)と『水底の女』(島尾敏雄監修 昭和53年刊)が刊行されているが、いま私の手元にあるのは先に挙げた3冊である。経年変化によってそれなりに日に焼け、背の端がめくれたりすこし破れたりしている。

シリーズ名の由来がこう記されている。

明治大正昭和にまたがる厖大な文学作品から、《花》・《水の女》・《饗宴》・《空》・《動物》など、神話的な豊かさと童話的な楽しさをはらんだ〝大きなイメージ〟を鮮かに定着した傑作の数々をよりすぐり、原色図版を多数併録して編んだ、《近代日本文学の博物誌》ともいうべきシリーズ。

二十代だったから「大きなイメージ」という文言に惹かれた。

いずれの巻も、創造性のきわだつ豊かな作品がおのずと響き合い、さらなるイメージを喚起する。文学の荒ぶる波に翻弄されて想像も妄想も爆発する強烈な読書体験だった。

しかし、何十年も経てば、「大きなイメージ」に現実の妙味をまぶしたくなる。

課せられた「生きる」という命題を、現実を、ひとはどう受け容れるのだろうか。どのように食べて生きるのだろうか、と。