話題の「二つ折りスマホ」が普及しないと言えるたった1つの理由

「5G」時代の切り札は別にある
西田 宗千佳 プロフィール

「値段が下げられない」たった1つの理由

二つ折りスマホが高価である理由は単純で、「必要なパーツがまだ高い」からである。

折り曲げるディスプレイに使われるのは、現状では、すべて有機ELディスプレイだ。大型の有機ELはそれだけでも高価だが、折りたためるようにするには、さらに大変な工夫が必要だ。

たとえばタッチパネル。電極層を折り曲げられるようにするためには、利用実績の少ない素材を使う必要がある。

ディスプレイの表面加工も課題だ。

スマホは、画面が傷つかないように表面をガラスでカバーするのが一般的だが、ガラスは二つ折りに向かないので、現状では使えない。

代替として用いられる樹脂は、ガラスに比べてやわらかく、傷がつきやすいデメリットがある。折り曲げに耐えて傷の問題にも対応するには、特殊な樹脂とコーティングの組み合わせが必要不可欠なのだ。

そこまで複雑で特別な素材を用いても、耐久性にはなお疑問が残る。

折り曲げる部分の強度はもちろんのこと、ガラスに比べて傷に弱い樹脂をどう守るのか。傷を防止しようにも、二つ折りという構造であるがゆえに、「カバー」もつけられない。

【写真】

複雑で特別な加工や素材を用いても、耐久性の問題が残る photo by gettyimages

高額に見合うメリットは?

そもそも、二つ折りスマホは便利なのか。

通常のスマホに比べ、画面が広く使えるのは利点だが、コンテンツによって向き・不向きは明確に存在する。

地図や電子書籍などは見やすくなるだろうが、画面の大きさが意外に利点にならないコンテンツも多い。SNSを中心とした「スマホ世代」的アプリは縦長に特化したつくりになっており、画面が横に広がっても、使い勝手はさほど向上しないのだ。

また、映画などの映像コンテンツの多くは、「16:9」や「21:9」でつくられた「横長」のものがほとんどだ。これを正方形に近いディスプレイに表示すると、上下に空白ができてしまう。

このような矛盾は、「余白は気にしない」か、「画面を分割し、余白部分に別アプリを立ち上げる」ことで解決されるだろう。そういう意味では、そこまで大きな問題とは言えないかもしれない。

だがそれも、「では、その余白のために、あなたはわざわざ2倍の値段がするスマホを買うのか?」という問いを前にすると、積極的に「イエス」と答える人は少ないだろう。

あらゆる製品がそうであるように、量産が進むことで、価格はある程度下がっていくはずだ。しかし、「そこまでコストをかけたものが、本当にマスになるのか」と考えると、価格差をはじめ、これだけ不利な要素が多いものが果たして一般に普及するのか、大いに疑問が出てこようというものだ。