イージス・アショア搭載レーダーの選定に専門家が抱いた「違和感」

なぜ相当の期間と経費を要するものが…

昨年7月、防衛省は「イージス・アショア」に搭載するレーダーについて、米航空機大手ロッキード・マーチン社製の最新鋭の「LMSSR」を採用すると発表した。「探知範囲も広く、弾道ミサイル防衛能力は飛躍的に向上する」と喧伝するが、これに異議を唱えるのが、防衛省阪神基地隊司令や日米合同演習の日本部隊指揮官を務め、ミサイル防衛に知悉している坂上芳洋氏だ。

坂上氏は、「導入の現実味」「コスト」の面から、この決定には問題があると指摘する――。

諸試験も終わっていない段階で…

防衛省は、秋田と山口に配備を計画する陸上配備型イージス・システム(イージス・アショア)に搭載するレーダーについて、有力視されていたレイセオン社の「SPY-6」ではなく、ロッキード・マーチン社の「LMSSR」を選んだ。これは筆者や日米の軍事関係者には大きな驚きだった。

米海軍が導入を決めたSPY-6とは違い、LMSSRは構想段階のレーダーで、製造実績がないからだ。

米政府が2020年にアラスカ州に配備する次期警戒管制レーダー「LRDR」(Long Range Discrimination Radar)を基に、これから開発される予定のレーダーだが、現段階ではLMSSRは製造もされておらず、もちろんレーダーとしての諸試験を完了していない。日米共同開発の弾道ミサイル迎撃ミサイル「SM-3 BlockIIA」を運用できるようになるまでに、相当の期間と経費を要する可能性がある。

 

しかも、ミサイル実射試験をはじめとする諸試験や技術更新などは日本政府の責任となり、経費の全面負担を強いられる。報道によれば、SPY-6の場合、米海軍とレイセオンは開発製造に約18億ドル、一連の諸試験に約5億ドルを費やしたという。さらに米ミサイル防衛庁(MDA)は防衛省に対し、LMSSRの性能を確認するため、日本政府の負担でハワイにLMSSRのテストサイトを建設するよう求めており、膨大な追加費用がかかる懸念がある。

LMSSR選定の大きな理由の一つは「日本企業の参画」だった。米政府から防衛装備品を購入するFMS(Foreign Military Sales:有償軍事援助)の増加で受注が減り、苦境に陥る日本の防衛産業を底上げするため、LMSSRには富士通のガリウムナイトライド(GaN)半導体素子が使用される予定だった。

ところが、防衛省はロッキード・マーチン社の通知により早々に断念。国内企業へのメリットはなくなってしまった。

また、コスト増から、巡航ミサイル対処機能の付加も見送っており、ミサイル防衛(BMD/CMD)体制の強化という面でも不十分だ。イージス・アショアは、LMSSRを搭載レーダーとして平成31年度政府予算案は成立したが、防衛省は構成品の選定をやり直すべきではないだろうか。