「こんまりメソッド」にセラピー効果はあるのか...精神科医の見解

「ときめき」がもたらすメリット
丸井 友泰 プロフィール

「ためこみ症」と「ADHD」の人は注意を

そもそも、片づけられない心理というのは、気力がわかない・時間がない、といった正常心理︎である場合がほとんどである。また、物をためこむ心理に関しても、もったいない・物を粗末にしてはいけない・いつか使うだろう、といった場合がほとんどだ。

人間は誰しも物をためこむ性質を持っているとも言われており、異常心理が背景にある場合は少ない。心の不安定さを埋めるために、物が溢れている環境に身を置いている場合もあるが、精神疾患の水準に至っているケースは多くないと思われる。

しかし、片づけられない/物をためこむ人の一部には、精神疾患を発症している場合がある。その代表的なものが、「ためこみ症」「ADHD(注意欠陥多動性障害)」だ。

 

まず、ためこみ症は、物の価値に関係なく物を捨てられず、生活空間を脅かすほどに物が溢れ、その結果、著しい苦痛が生じる疾患である。疾患レベルではない単なる「ためこみ行動」と疾患レベルの「ためこみ症」には連続性があるとも言われているが、ためこみ症の有病率は、1.5%〜6%程度であり、多くの場合は単なるためこみ行動であって疾患ではない。

ためこみ症の治療は非常に難しく、認知行動療法(ものの受け取り方や考え方に働きかけ、気持ちを楽にする、行動をコントロールする心理療法)の有効性が示唆されているが、研究数が非常に少ないのが現状である。また、ためこみ症には他の精神疾患が並存する場合も多く、例えば、ためこみ症患者の約30%はうつ病(大うつ病性障害)を発症しているとも言われている。

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もうひとつのADHDは、不注意・多動性・衝動性の3つの特性がある発達障害であり、症状としては、「片付けられない」「忘れ物やなくし物が多い」「約束や期日を守れない」「思ったことをすぐに口に出してしまう」といったものがある。有病率は成人で3〜4%程度(個々の研究により異なる)と言われている。治療法は、心理療法を併用する場合も多くあるが、薬物療法が第一選択である。ADHDは発達障害の中では薬物治療が奏効する場合が多いからだ。

もちろん、適切な治療を受けたうえでこんまりメソッドを実践するのは問題ないと思うが、上記の精神疾患がある人は片づけが大きなストレスになるため、念のため、集中力や判断力が片づけが可能なレベルに回復しているかどうか、主治医に確認した方がいいだろう。

なにしろ、こんまりメソッドは「まずは一気に、短期に、完璧に捨てる」ことを重要視している。衣服や小物など、カテゴリごとに一度全部1箇所に集めてその量を視覚化し、それを一気に整理していくため、正常心理にある人でもかなりのエネルギーを要する。