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「こんまりメソッド」にセラピー効果はあるのか...精神科医の見解

「ときめき」がもたらすメリット

Netflixで『KonMari ~人生がときめく片づけの魔法~(Tidying Up with Marie Kondo)』が2019年1月から配信されると同時に、米国を中心に世界的な「一大片づけブーム」を巻き起こしている、片づけコンサルタントの「こんまり」こと近藤麻理恵氏。

物のいる・いらないを「触ったときに、ときめくか」で判断し、捨てる際は物に労いの言葉をかける。先の番組の中で、そんな彼女のメソッドを体験した人々は、その過程で涙を流し、最後には晴れやかな笑顔になる。

その様は、まるでセラピーのようだ。「こんまりメソッド」には実際、心理学的な効果があるのだろうか。精神科医の丸井友泰氏が考察する。

「ときめき」は心理学的にも有効

物を捨てる際に、「まだ使える」「いつか役に立つかも」「思い出の品だから」など様々な考えが浮かび、捨てる基準を決められず、身動きがとれなくなってしまうことがあると思う。

そのような捨てられない人たちに、捨てる基準はそんな直感的なものでいいのだ! と優しい光を灯したのが、「こんまりメソッド」にある「触ったときに、ときめかないものを捨てる」というルールだ。

実はこの「ときめき」は、心理学的な面から見ても有効と言える。

「触った瞬間にときめきを感じるかどうかで判断する」という直感的なものであり、個人に大きな裁量権が与えられている。自由度が高いため、細かいマニュアルを求める人には難しく感じるかもしれないが(細かいマニュアルに従える人にはそもそも片づけ本など不要だと思うが)、片づけを達成した際、自分で考え、計画し、成功した結果であるため、達成体験を通して自己効力感(簡単に言えば“自分ならできる!”という感覚)を高める効果が期待できる。

こんまり氏は片づけで人生が劇的に変わると言い、その理由として「片づけをしたことで、過去に片をつけ、その結果、人生に何が必要で何がいらないか、何をやるべきで何をやめるべきかが、はっきりとわかるようになる」と著書『人生がときめく片づけの魔法』で述べている。

その表現は少し大仰に感じるが、こんまりメソッドを実践した結果、人生を劇的に変化させることができた多くの人たちは、メソッドを通じて自己効力感を大いに高めることができたのであろうと推測する。

 

「こんまりメソッド」はアドラー心理学にも通じる

また、近年話題になっているアドラー心理学に通じるところもある。アドラー心理学は原因論(問題にぶつかった際に、その原因を考える)ではなく、その対極の目的論(目的達成のために、後から原因を持ち出す)を重視している。

片づけたいのに片づかない場合、原因論に基づくと、「時間がないから、片づかない」(他にも、「片づけてもすぐに散らかってしまった過去があるから片づけられない」といった場合などさまざまだろう)と説明できる。

一方で、この状況を目的論に基づいて考えると、ちょっとややこしい言い方になるが、「片づかない状況において、片づかない状況を維持するという目的のために、時間がないという理由を持ち出している」ことになる。

片付けたい場合、目的論の立場では、「片づかない」という目的を「片づける」という目的に変換することを試みる。「片づける」という目的に変換するためには、どういう理由を持ち出せばいいか、を考えるのだ。

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ここで、こんまりメソッドにある、「片づけをする目的を考える」「理想の暮らしを考える」「片づいた部屋で生活している様子をありありとイメージする」といったものが、まさしく「片づかない」という目的を「片づける」という目的に変換するために理由を持ち出すことと同義になっている。

実際に、こんまりメソッドが世に出たのち、「アドラー式片づけ術」もメディアで耳にするようになった(アドラー式片づけ術に関しては長くなるのでここでは詳しく触れない)。

とはいえ、片づけに関する精神医学的・心理学的な研究はほとんどないのが実情だ。研究のテーマとしていくつか存在するが、検証が十分に行われているわけではない。だからこそ、さまざまな片づけ術の書籍が巷に溢れているともいえる。

しかし、そんな数多ある片づけ術の中でも、こんまりメソッドは心理学的に有効な点が多く、理にかなっているものと思われる。

ただ、精神科医の立場として次の点に触れておきたい。