ベッドタウンも侵食中の「所有者不明空き家」がもたらす巨大コスト

住まいにも「終活」が必要です
野澤 千絵 プロフィール

空が見える物件

こうした既に起きている現象からの教訓は、国も自治体も、そして、私たち一人ひとりも、住まいを終活する慣習が根付くことが必要不可欠という点だ。

「負動産」と揶揄されるような、民間市場での流通性が低い物件やエリアでは、所有者自身がその処分を諦めてしまいがちであるが、全国的に調査を進めると、家を売ろう・貸そうという際に、きちんと対応してくれるような信頼できる担い手(地元の不動産業者やまちづくりNPOなど)に出会えるどうかかが、非常に重要な鍵になっていることに気づく。

 

例えば、写真②の空が見えている負動産物件でさえ、相続人が途中で投げ出さず、地元で信頼されている不動産業者に行きついたおかげで、最終的に売却できたというケースもある。

写真② 空が見える物件(2018年12月撮影)

この物件は、数年間、空き家であった期間になぜか屋根に穴が開き、室内に雨水が入り込み、家を改修して活用することは不可能な状態になっていた。

さらに、土地も極めて狭小で形状も悪く、狭い道路に接しており、建替え時に敷地を後退させなければいけないため、解体して住宅を新築することも難しく、せいぜい駐車場が2台分程度、確保できる物件であった。

こうした売れる見込みが低そうな家であったが、この相続人は、将来のことを見据え、とにかく諦めずに、「売却」ではなく「処分」することを重視し、最終的に、空き家ごと買い取り、解体後に当面、駐車場として貸し出してもよいという地元の不動産業者と出会え、最終的に処分することができた。

確かに、不動産の「売る」というのは、「買う」よりも格段に面倒ではあるが、私たち一人ひとりが住まいを終活することで、将来的に、所有者不明空き家化やゴーストタウン化を抑制し、ひいては将来世代にとっても引き継ぎたいと思える街の価値を創りだすことにつながると言えよう。

新たなビジネスモデルの構築も欠かせない

国も、所有者不明土地問題については、2020年臨時国会に、民法などの関連法案の提出を目指し、相続登記の義務化や所有権の放棄制度の導入の可否、その受け皿組織のあり方、遺産分割の協議ができる期限の制限、相続財産管理人制度の見直し、土地基本法の見直しなどの検討が急ピッチで進められている。

これらの検討は、基本的に所有者不明の土地が対象であるが、当然、所有者不明の空き家問題にも直結してくるものの、居住地を中心とする所有者不明空き家問題には、周辺の生活環境への影響の度合いや解体費の捻出などの面で異なる課題が存在している。

所有者不明空き家問題の対応は、全国の空き家行政の状況を見る限り、空家等対策特別措置法や自治体の条例による荒廃空き家への対症療法ではなく、国による根本的な解決策や支援策の検討が急務だ。

加えて、今後、高度経済成長期に建てた大量の住まいで相続が発生することから、住まいを終活する方がメリットの得られる税制等の見直しや住まいを終活するための新たなビジネスモデルの構築も欠かせない。

私たちは、家を買う時、新たに建てる時には、いろいろな選択肢を考え、その情報収集にも時間も労力も注いでいる。

今後は、更にもう一歩進めて、自分たちの住まいの将来の選択肢や可能性を見出し、行動に移すことに時間や労力を注ぐことが当たり前になる社会になる必要があるのではないだろうか。

特に、「住まいを終活する」と聞いて、ピーンとこなかった方こそ、是非、住まいを終活するためのはじめの一歩を踏み出して頂ければ幸いである。

<引用文献・補注>
*1 総務省行政評価局「空き家対策に関する実態調査結果報告書」,平成31年1月
*2 相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」に、家庭裁判所に申し立てを行い、正式に受理されなければいけないが、「自己のために相続の開始があったことを知った時」というのは、一般的には、「被相続人の死亡の事実を知ったとき」とされている。