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ベッドタウンも侵食中の「所有者不明空き家」がもたらす巨大コスト

住まいにも「終活」が必要です

19日、一般社団法人不動産協会が選定する不動産協会賞が発表され、昨年12月に刊行された野澤千絵さんの『老いた家 衰えぬ街――住まいを終活する』(講談社現代新書)が、みごと受賞しました!「様々な人々にとって今後の住まいの在り方について真剣に考える契機となる作品」と評価された作品を著した野澤さんが、「所有者不明空き家」の恐ろしさを訴えます。

難波の一等地に、荒廃空き家

大阪市難波の一等地に、損壊したまま放置された、有名な荒廃空き家がある。

屋根や壁が吹き飛び、家の中は丸見え。このままでは、2018年9月の台風21号のような災害による損壊だけでなく、放火などのリスクも高く、通行人や近隣の建物にも被害が及ぶ危険性がある。

 

「なぜ、こんな状態を所有者は放置しているのか?」「行政はなぜ何もしないのか?」と疑問に思われる方も多いだろう。

写真① 難波の一等地にある荒廃空き家(2019年3月撮影)
 

このように荒廃した空き家は、不動産登記簿等で所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない、いわば「所有者不明空き家」となっているケースが多い。

自治体が何らかの対応しようにも、まずは、その空き家の所有者を探索・特定する必要があるが、自治体ですら所有者の特定に多大な時間・労力を要し、非常に苦慮している。

最近では、「所有者不明空き家」という言葉が、とうとう、テレビのバラエティ番組のテーマとして目にするほど、社会的な問題になり始めている。

所有者不明の土地や空き家が生まれる理由

では、なぜ、所有者不明の土地や空き家が生まれるのか?

空き家の相続等のもめ事で解決が困難化しているケースもあるが、根本的な要因として、日本では、所有権移転等の際に登記の移転を義務づけていないことがある。

不動産登記簿上の名義が他界した人のままでも、当面、特に何か困った事態が起きるわけでもなく、登記には費用や手間もかかるということもあり、相続登記をせず、実体法上、法定相続人によって共有され、そのまま何十年も放置されるケースがある。

また、相続時に、とりあえず複数の相続人による共有名義にしておくというケースもある。

こうした未登記や共有状態になっている空き家は、時間がたてばたつほど、さらなる代替わりによって、相続人の数がねずみ算式に増えていき、所有者不明空き家化していく。

その結果、一部の相続人が空き家を処分したいと思っても、まずは、その空き家に関わる全ての法定相続人を特定し、それぞれの所在や連絡先を調べ、合意をとる必要があり、そのために相当の手間や時間・費用がかかる。

加えて、近年、被相続人に借金があるからという理由だけでなく、売れる見込みが低い負動産が含まれている場合、多少の預貯金があっても、税金や管理などの負担し続けたくないということで、相続放棄を選択する相続人も増えている。

総務省行政評価局による「空き家対策に関する実態調査結果報告書」(*1)によると、全国72自治体が空き家の所有者等を調査した計1万1565戸のうち、固定資産税情報・登記簿情報・戸籍情報・住民票情報の照会や電気・ガス・水道情報の照会、更には周辺住民や福祉施設等への聞き込みを重ねても、空き家所有者等の特定ができなかった空き家が、約5%(576戸)にも上っているという。

自治体ですら、様々な情報を駆使し、どんなに手を尽くしても、自治体が調査した空き家の20軒に1軒は所有者が特定できておらず、かつ固定資産税も徴収できていないことになる。