ブレグジットで「崩壊する」のは、結局EUのほうである

やがて離脱が得と明らかに
大原 浩 プロフィール

ドイツの黒字は見せかけ

繁栄するドイツが他の加盟国を助ければ、EUの諸問題は解決できるとする議論もあるようだ。しかし、ドイツの繁栄は見せかけなのだ。

まず、ドイツが繁栄している証拠の1つとしてよく取り上げられる貿易黒字だが、これは張りぼてである。EU全体が域外貿易で本当の黒字を稼いでいるのは確かだが、貿易黒字において大きな比重を占める域内貿易にはドイツが黒字を生み出す「トリック」がある。

EUシステムの最大の問題点は、ユーロという通貨を統一したのに、加盟国の財政・経済政策はバラバラのままにしたことである。

これは、日本という国の通貨が円で統一されているのに、東京都と青森県で税率、財政支出がバラバラで、「東京・日本銀行」と「青森・日本銀行」とで全く別の金融政策(通貨供給・金利など)を行っているのと同じなのである。

英国が、ユーロが構想された当初から「そんな無茶苦茶なことができるはずが無い」と主張し続け、参加しなかったのは賢明というよりも当然のことである。

EUの問題点は山ほどあるが、まず統一通貨ユーロを廃止するか、逆に各国の金融・財政政策をEU本部がコントロールするかしなければ、根本的な問題解決には至らない。

そして、どちらも実現は不可能と思われるので、EU崩壊は必然といえる。

さらに、統一通貨は各国の貿易収支を均衡させる「為替調整」というものを不可能にしてしまったため、ドイツの貿易における独り勝ちという現象を生んでしまったのである。

例えば、日本と米国の間で「統一通貨」が採用され為替調整が行われなくなったとする。日本の貿易黒字が膨らんでも、「円高」によって輸出品の実質価格が上昇して販売数量が減ることによって日本の貿易黒字が減る「為替調整」が行われることは無い。延々と日本の貿易黒字は増え続け、トランプ大統領は激怒するだろう。

共産主義中国などが「為替操作国」として、米国から糾弾されるのも「為替調整」が自動的に行われ、恣意的な介入を受けないことが自由な国際貿易にとって重要であるからだ。

EUにおけるドイツは、まさに「為替操作国」であり、ユーロの導入によって為替調整が行われず(実質的に)有利な為替レートで、EU加盟国と取引をするので、大幅な貿易黒字となるのだ。

しかし、その黒字は結局、EU内の貿易赤字国の国債などに投資されるから、他の国が疲弊して破綻すれば、ドイツの貿易黒字は絵に描いた餅になる。

 

欧州の「不良債権」問題はこれから本格化

2009年のギリシャ危機では、世界中が大騒ぎしたが、不良債権はギリシャ・スペイン・イタリアだけの問題では無い。

実はドイツの不良債権問題が最も深刻かもしれないのだ。

日本が1990年頃のバブル崩壊後、不良債権に長年苦しんだのは周知のとおりである。しかし、その問題が本当に危機的状況になったのは、1997年の北海道拓殖銀行の破綻から2003年のりそなの実質破綻までの期間であり、バブル崩壊から10年ほどたってからのことだ。

なぜ、そうなったのかといえば、日本の金融機関がひたすら問題の先送りをしたからだが、欧州の金融機関も基本的に同じことをしている。その上、リーマン・ショックから10年余りが経過した。先送りしきれなくなった問題が近いうちに表面化する可能性が高い。

ドイツ銀行破綻の噂はかなり前からあるが、コメルツ銀行と合併して解決しようとする模様だ。しかし、不良債権を抱えた金融機関同士が合併してもあまり意味が無い。

解決策として考えられるのは、不良債権だけを「バッド・バンク」(日本の整理回収機構のようなもの)に集中させ、銀行本体の健全化を図ることだが、その動きは遅々として進んでいない。

ドイツ銀行とコメルツ銀行が合併するということは、日本で言えば3大メガバンクとりそなが1つになるようなものである。

もし、合併後の巨大新銀行が破綻すればEUには血の雨が降るであろう。ドイツでさえ、このような状況なのだから、他の欧州諸国の状況は容易に想像がつく。

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