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ブレグジットで「崩壊する」のは、結局EUのほうである

やがて離脱が得と明らかに

例え無秩序でもEUから離脱したほうが良い

「ブレグジット」が3月末を控えて、話題になっている。しかし、例え無秩序であっても、英国にとってEUから「脱出」するのは大きなプラスである。

もちろん、無秩序離脱が短期的に英国に与えるダメージがそれなりのものであることは否定しないが、氷山にぶつかり沈みゆくタイタニック号から救命ボートに飛び乗るときに生じる打撲や切り傷のことを心配するだろうか?

表面的には、体制を維持しているように見えるEUの内情はぼろぼろであり、すでに浸水が始まっている。

実のところ、ドイツやフランスをはじめとするEU主要国の政治家たちはそのことをよくわかっている。だから、英国をEUにつなぎとめることに必死なのである。

英国は対EUでは大幅な貿易赤字国であり、他のほとんどのEU加盟国は英国との貿易で黒字を稼いでいるのだ。

だから、混迷を極める英国の状況にも関わらず、EU首脳は英国と辛抱強い交渉を続けている。英国という金の卵を産む鶏を失いたくないのだ。つまり、ブレグジットを恐れているのはEUの方である。

確かに、英国議会やメイ首相の言動を見ていると、かなり混乱しており、ブレグジット後を心配する人々が多いのも、ある意味仕方が無い。しかし、長期的にはその懸念が無いことは、10月15日の当サイト記事「ブレグジッドは大正解 英国よ沈みゆくEUからいち早く脱出せよ!」を参照いただきたい。

短期的な混乱を乗り超えれば、英国には長期的に明るい未来が待っている。例えば、欧州の優等生スイスがEU「非加盟国」であることは忘れられがちだ。ノルウェーも非加盟だが経済は好調である。

前出記事に書いたように、そもそも、英国はEUに加盟すべきでは無かったのだ。

英国が統一通貨ユーロに参加しなかったことは、本当に不幸中の幸いだ。もし、英国がブレグジットの際にユーロから脱退しなければならなかったとしたら、混乱ははるかに大きかっただろう……。

もちろん、米国、日本もEU非加盟国である。ブレグジットが実行されれば、TPP11にも加盟することができる。

米国と英国がともにTPP11に加盟すれば、世界のGDPの40%を超える巨大な経済圏になることは、当サイト3月14日の記事「TPP11の中心国・日本は世界再編のキャスティングボードを握るか」を参照いただきたい。

 

ジレ・ジョーヌ運動は反EU運動でもある

ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)運動は、早くも世間から忘れ去られた感があるが、当サイト12月17日の記事「パリから始まる反グローバリズムのうねりは『世界革命』に移行するか」で解説した様に、この運動は、フランスが政治的な軸となって巨大化しているEUに対して国民がノーを突き付けている表れなのだ。

EUは、フランスが政治面での盟主、ドイツが経済面での盟主という「両輪」となって機能しているが、どちらの国も全体主義的であり、EUを全体主義的・官僚主義的組織にしている主要な原因でもある。

ドイツが全体主義的傾向を持つことは「ナチス・ドイツ」のイメージと重なってわかりやすいが、「フランス革命」、「米国への自由の女神寄贈」などで自由のイメージにあふれるフランスも、フランス革命でルイ16世を処刑したのに、その後まもなくしてナポレオンを、民の熱狂的支持のもと独裁者である皇帝の地位につけている。

フランスの場合は、マクロン大統領に代表されるエリート層の全体主義と、民衆の自由を求める叫びとの対決が、フランス革命以来続いているといえるかもしれない。

EU官僚の日本の財務省などの省庁を凌駕する「お役所仕事」や、「新貴族」と揶揄される破格の待遇など、EU加盟国の国民の怒りを掻き立てる逸話には事欠かない。

新聞・雑誌・テレビなどのオールドメディアでは、反EUを掲げる政党を「極右」などと呼ぶが、これは大きな誤りである。加盟国の国民が「反EU」を唱えるのは、巨大化し権力をたくわえ、国民をないがしろにするEUの政治家や官僚に怒りを感じているからである。

だから、彼ら「反EU派」はバスティーユを襲撃したパリの民衆達と同じなのである。実際、国民負担率(税や社会保障費などのGDPに対する比率)はフランスでは70%に達しつつあり、7公3民状態だ。

江戸時代の年貢が概ね4公6民であったことを考えれば、とてつもない負担である。もちろん、江戸時代には現在のような手厚い社会保証は無かったが、税を負担する人と、社会保障を受ける人は別である。

ちなみに、現在の日本の国民負担率は、概ね4公6民である。

EUの犯した過ちは、ユーロという共通通貨の導入など数え切れないほどあるが、それでも加盟国の国民の支持があれば、挽回のチャンスはある。

しかし、加盟国の国民の支持を得られず、EUの政治家や官僚が独善的な政策に固執するなら「フランス革命・バスティーユ襲撃」ならぬ「EU革命・ブリュッセル襲撃」が起こってもおかしくは無い。