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高級ワインが原価で飲める!「サンミラボ」のすごいビジネスモデル

味覚でつながるコミュニティの可能性
マネー現代編集部 プロフィール

ワインの世界のハードルをとことん下げる

ところで、sanmiのような高級レストランではなく、「無人×24時間×キャッシュレス」という真逆のような業態を作ろうと思ったのはなぜなのだろう。

その理由は主に3つあるという。

・ワインの世界のハードルを下げ、ワインに触れたことのない方にもワインを楽しんでもらえるようにしたい
・人に依存するビジネスモデルから脱却したい
・ワインメインのペアリングが楽しめる場所を作りたい

「月額のサブスクリプションと、旧態依然としたしがらみの多いワインの世界。そこをくっつけて、ごく一般のお客様に広く発信することで、もっと上質なワインの奥深さを楽しんでもらえたらいいなというのが今回のコンセプトです。ただ、これはsanmiというブランドの力があった上で展開できること。そのために、会員制の高級レストランであるsanmiの存在は欠かせませんでした」

あくまでsanmiが有名になった後に、いかに広く展開してくか。野口さんは初めから、そこを見据えて動いてきた。

「飲食店が原価の2倍、3倍の料金でサービスを提供する価値って、やっぱり人だと思うんです。料理人にしろ、バーテンダーにしろ、その人に会いに行く、その人が経験してきた30年40年の知見を学びに行くといった側面がすごく大きい」

「僕は、道端でファンに絵を描くよう求められたピカソのエピソードが大好きなんですが、それに重なる気がしています。ピカソはファンに求められて30秒ほどで絵を描いて手渡すとき、『この絵の価格は100万ドルです』と言ったそうです。

たった30秒で描いた絵にどうしてそんな高値がつくのか。そう尋ねられたときピカソは『いいえ、30年と30秒ですよ』と答えたそうです。僕がこのエピソードに共感するわけは、料理でもワインでも、今この瞬間の時間を切り売りするんじゃなく、その人の人生何十年分が乗っかった金額を表現するべきだと思っているからなんです」

 

この人がいなければダメ、成り立たないというモデルは魅力的な一方で、リスクが大きくて怖いと野口さんは言う。

「多くの人にワインをもっと手軽に楽しんでもらいたいと思ったとき、人に依存するビジネスモデルは避けたかった。会社の存続、展開を考えたとき、『無人×24時間×キャッシュレス』というスタイルが理に適っていました」

「そのため、ワインをサーブする『自動販売機』のようなマシンも輸入ではなく、自社で開発してしまった方が良いのではないかという話になっているくらいです。もともとイタリアのメーカーのマシンを輸入するつもりでしたが、日本の総代理店との契約が切れたら供給がストップしてしまうリスクだってはらんでいます。自社でマシンを開発できれば外部に依存しなくてよくなるし、データの収集にも有利です」

ワインを自動でサーブするマシンのイメージ

これからの時代、人に依存しないモデルを作るというのはサービスを拡大していく上で避けては通れない。競争力にもますます直結していくのだろう。

「あと、料理人の意見とワインラヴァーの意見って、たまに対立するときがあるんです。それは立場が違うから。料理メインでドリンクを見るのか、ドリンクメインで料理とのペアリングを見るのかといった立場の違いです。僕の場合、完全にドリンクありきで料理とのペアリングを見ているので、ペアリングの化学反応が面白ければ、最悪の場合、料理が美味しくなくてもいいんじゃないかと思っているほどです。

もちろん料理は美味しい方がいいに決まっていますが、極端な話をすれば最終的なペアリングさえ面白ければそれでいい。だから、ワインメインで気軽にペアリングが楽しめる店が欲しかったんです」