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ピエール瀧「薬物問題」の一考察〜日本は世界から10年遅れている…

いまだ根深い2つの誤解

突然の逮捕劇

人気ミュージシャンで俳優のピエール瀧さんがコカイン使用の容疑で逮捕されたというニュースが駆け巡った。

ワイドショーやネットはこのニュースでもちきりで、各社が大々的に報道している。そして、その報道ぶりを見て、私は「またか」という暗澹たる気持ちになっている。

大前提として、コカインは違法薬物であり、それを使用することは犯罪である。その事実には異を唱えるつもりはないし、擁護する気持ちもない。

とはいえ、いくら有名人だからとって、この洪水のような「一億総叩き」現象は何だろうか。

かつて有名人が覚せい剤や大麻などの違法薬物使用容疑で逮捕されたときも同様だったが、家族を引っ張り出したり、ここぞとばかりに人格攻撃をしたり。かと思えばタレント仲間が、「そういえば前からおかしかった」などと「証言」をしたり。毎度のことであるがうんざりする。

 

メディアの対応

報道の流れを見ると、大きく2種類の方向性があるのがわかる。1つは、今述べたような攻撃的な内容と、もう1つは逮捕の影響を懸念する(あるいは面白がる)内容である。

後者に関しては、彼が関係している出演作やCMなどをリストにして、番組休止になるのか、上映差し止めになるか、などと大騒ぎしている。

NHKの大河ドラマを始め、数多くの人気作、話題作に出演している人気俳優であるから、その影響は計り知れない。また、所属バンドである電気グルーヴが、ちょうど結成30周年の記念ライブツアーの真最中であったことも大きな話題となっている。

ツアーについては、早々に中止が決まり、出演作も降板や放送中止となったものがある。NHKは、大河ドラマについては「検討中」であるとしているが、ホームページからは顔写真が削除され、オンデマンド配信は中止したという。

この足並みのそろった「素早い」対応には驚くばかりであるが、テレビのコメンテーターのなかには、「何もそこまでしなくても」という意見を述べる人々もいた。つまり、出演者と作品は分けて考えるべきであるとの意見である。

また、つい先ごろ、別の人気俳優が強制性交罪の容疑で逮捕されたばかりであるが、あのときは被害者のいる犯罪で、今回はそうではないから過剰に反応しすぎであるとの意見も見られた。

これまでもこのような過剰反応には、たびたび疑問の声が上がっている。

テレビ局がスポンサーや視聴者の反応を気にするのはわかるが、事なかれ主義を第一にして、貴重なドラマや映画、音楽を封じてしまうことについて、もっと議論をしたほうがよいのはたしかである。