2019.03.25
# ビジネススキル # スポーツ

知将・野村克也氏が伝授!ビジネスに使える「メモのとり方・活かし方」

「5W1H」を意識せよ
野村 克也 プロフィール

8つほめてふたつ教える

テレビカメラの前でいつも愚痴ばかり言っていたからだろうか。あるいは監督時代にヤクルトスワローズの古田敦也や楽天イーグルスの嶋基宏に対し、ベンチで小言ばかり言っていたからだろうか。世間の人たちは私のことを「小難しいことばかり言っている頑固親父」と思っている方も多いようだ。

Photo by iStock

でも、私の指導者としてのやり方は決して小言だけを述べたり、叱ってばかりだったりしていたわけではない。むしろ、選手たちを伸ばすためには「ほめることが重要である」と考えていたから、「8つほめて、ふたつ教える」くらいの感覚を持って選手たちと接していた。

グラウンドは戦場であるから、そんな戦いの場で選手を叱責ばかりしていたら、チームの士気が下がってしまう。だから、私は叱ることはキャンプなどの練習の場だけにし、戦いの現場では選手の失敗には目をつぶり、「気にするな。お前ならできる。次を何とかしよう」と選手の気持ちを前向きにし、その実力を十二分に発揮できるよういつも気を配っていた。

試合中、ミスをした選手に向かって「何をやっとるんだ!」と怒鳴りつけるだけでは、チームにとってプラスになることは何ひとつない。そんな時こそ「お前なら大丈夫だ」と気を楽にさせてやることが、何よりも肝心なのだ。

現役時代は、ピンチになると捕手である私がマウンドに駆け寄り、投手に声をかける。この時も、投手の心理がマイナス思考とならないよう言葉にはいつも気をつけていた。

例えば、コントロールはいいが、球威があまりない投手に対してそれについて気づいてメモしたとしても、「球威が落ちてきている。コントロールをひとつ間違えば打たれるぞ」などと言っても、それでは投手をより神経質にしてしまうだけである。

 

だから私は、そんな時は「お前のコントロールなら大丈夫。アウトローにいつものストレートを決めておけば打たれんよ」と、投手の不安を払拭できるような言葉をかけてあげるようにしていた。

ピンチで相手の4番を打席に迎え、わざわざマウンドまで行って、「いいか、ここは一発だけは気をつけろよ」などと言うのは愚の骨頂である。

そんな時も、「あの4番は低めにしっかり投げておけば一発はないから。低めを丁寧に突いていこう」と助言してやれば、投手は「そうか、一発はないのか」と気が楽になり、「よし低めに丁寧に投げていこう」と前向きな気持ちになれるのだ。

投手という人種は、わがままで自分勝手な人間が多い。でも、そんなタイプの人間ほど、実は打たれ弱く、ちょっとしたことで気持ちがしょげてしまう。

だから私は、いつも「グラウンドではお前が大将、お前が一番。打たれたら俺の責任だ」というスタンスで投手と接していた。そうすれば、彼らは上機嫌で気持ちよくピッチングができ、結果としてチームに勝利がもたらされるのだ。

そんなわけで、私が小言ばかり言っていたのではないことは理解していただけただろうか。会社で上の立場にある方々にも「8つほめて、ふたつ教える」というスタンスは有効である。ぜひお試しいただきたい。

SPONSORED