2011.06.01

「最善を望みながら、最悪を覚悟する」
ストレスに強い賢人の危機管理術に学ぼう

河合薫さん(健康社会学者)に聞く「食とストレス」 Vol.2

vol.1 はこちらをご覧ください。

50年過ぎると組織は腐る?

内藤: 最近、いろいろなことでリスクが高まっていると思うんです。企業もそうですけど、たとえば東電があんなふうになってしまうなんて、これまでは考えられませんでした。

河合: 私がANAに入社したとき、JALさんがあんなふうになるなんて、これっぽっちも思っていませんでしたよ。

内藤: JALなんて3、4年前は大学生就職ランキングの10位に入っていましたよね。

河合: 私がANAに入社したときは、国際線が飛び始めて2年目でした。世間では「これからはJALじゃなくてANAのスッチーだよ」(笑)と言われていたんです。でも、地上訓練が終って、成田に初フライトで出社したとき、大ショック受けまして・・・。JALは立派なビルなのに、ANAが出社する場所はプレハブだったんです。

内藤: 海外に行っても鶴のマークはずらりと並んでいるのに、ANAの飛行機は遠くに一機しか停まっていないような状況でしたね(笑)。

河合: そうそうANAは「ここも空港なの?」というような遠いスポットに停めさせられたり、空の上でもJALの後ろを飛んだり。いつも先頭を走っているのはJALでしたね(笑)。

内藤: それにしても、最近はリスクの振れ幅が大きくなっているように思います。企業に限らず、良い物が突然悪く言われたり、悪いと言われていたものが良いものになったり。たとえば、昨日まで健康にいいと言っていた食品が、今日は身体に毒ですということが起こったり。

河合: それは世の中に情報が多いからではないでしょうか。

内藤: 事実が見えてきたってことですね。

河合: 昔は社会の中に、ある程度ヒエラルキーがあって、それは絶対崩れるものじゃなかったものが、安心しすぎて歪みがいま露出している時期だと思うんです。いままで絶対だと思ってきたものが崩れたということは、突然今日ダメになったんじゃなくて、ずっと何かが起こっていたはずです。

内藤: 実はすでに腐りはじめていたんですね。

河合: それを絶対的だと思い込んでいたから腐りはじめているものが見えていなかった。ポキンと折れたときに、ああまずいと思う。でも、ポキンと折れても、まだ大丈夫と思っている人たちがたくさんいるから、東電もそうですが、初動が遅くなったんでしょうね。

内藤: 今回の震災対応もそうですが、何でも50年くらい経つと、溜まっていた歪みが顕在化しはじめて、物事がうまくいかなくなりはじめると思うんです。たとえば、戦後から50年近く経って、1990年代になって、日本社会ってなんか変、と感じるようになりました。丁度海外から日本に帰国して、その違いが見えたからというのもあるかもしれませんが。

 ライブドア事件も、犯罪は許されないとしても、既得権益に一人の若者が挑んでいったら潰されちゃった、という見立てもできます。そんな日本の歪みが、津波という天災をきっかけに、あぶりだされたように思います。

 震災後の政府の対応とか、東電、経産省、保安院の関係など、いままで変だと思っても放置されてきた。歪みが1つの引き金をきっかけに、全部さらされたような気がします。

河合: 見えなかったものが、露出してしまったんですね。

内藤: 時間が経過して組織が実態にそぐわなくなってきて、それを今回、変えなくてはいけないというメッセージだと思うんです。戦後もシステムが変わったから日本も成長しました。今回もそれと同じようなことが起きているのだから、変わるきっかけにならないと、もし、このままいまの官僚制度などが温存されて、結局なんとなくごまかしてしまうと、もう日本の終わりかなと。

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