000、500は名著の証? 現代新書のキリ番をふりかえってみた

創刊55周年、通巻2500番を記念して
現代新書編集部 プロフィール

1500番、村上陽一郎『科学の現在を問う』

科学技術の進歩で、人間は幸福になったのか。「科学と技術の発展によって、国と国民が豊かになる」時代は、終焉しつつあるか。情報化、医療と倫理、宇宙開発など、日本の諸問題を多角度から論じる注目の書。

2000年刊行(僕は保育園児でした)。20世紀の終わりに、科学哲学の大家が、科学技術の発展とその倫理的問題について批判的に述べています。

 

第2章「技術と安全」では、東海村JCO臨界事故の経緯や反省点を非常に詳しく述べています。東海村の事故は非常に初歩的な技術ミスから発生、その要因として、現場職員の知識の欠如と、現場からの提案に対する企業の管理上の問題を挙げます。

「造られたものを安全に機能させるためには、造ったときに匹敵するほどの努力を注がなければならないのである。これを怠たれば、造られたものは、無用の長物ならまだしも、凶器にさえ変じることがある」(本書66p)

刊行から20年近く経過した今でも、非常に示唆に富み、これからの日本と科学技術の関係について、有用な知見を得ることができる本です。

2000番、福岡伸一『世界は分けてもわからない』


60万部のベストセラー『生物と無生物のあいだ』続編が登場!  生命は、ミクロな「部品」の集合体なのか? 私たちが無意識に陥る思考の罠に切り込み、新たな科学の見方を示す。 美しい文章で、いま読書界がもっとも注目する福岡ハカセ、待望の新刊。

2009年刊行。「どんなささいなことがらについてでも、それを愛し、そのことについて調べたり、試したりしている一群の人々が必ずいる」という福岡先生らしい詩的な文章で始まる本書。

魚市場を散歩し、マグロの目の光に気づけば、その目の構造の特殊性に話は進展し、コンビニのサンドウィッチに目を向ければ、物の腐る仕組みや、ソルビン酸の性質について平易に解説します。

本書は、科学者が見ている世界をそのまま体験でき、私たちの生活が様々な科学現象によって営まれていることに気づくことができます。

さらにそれだけではなく、タイトル『世界は分けてもわからない』の通り、科学的分析の限界についても、本書の射程は及びます。

「ある瞬間だけを捉えてみると、供し手と受け手とがあるように見える。しかしその微分を解き、次の瞬間を見ると、原因と結果は逆転している。あるいは、また別の平衡を求めて動いている。つまり、この世界には、ほんとうの意味で因果関係と呼ぶべきものもまた存在しない」(本書275p)

生物科学に限らず、私たちの近視眼的なものの見方を改めてくれる、世界の見方がガラッと変わるような本です。

2500番、大澤真幸『社会学史』

今年3月刊行。現代新書の2500番は、現代の碩学、大澤真幸氏による『社会学史』です。橋爪大三郎氏との共著『ふしぎなキリスト教』や『げんきな日本論』がよく読まれていますが、実は現代新書では、大澤氏の単著はこれが初なのですね!

デュルケームや、マルクス、ヴェーバーなど、名前は聞いたことがあるけれど、その思想については……という人も多いかと思います。本書はそれらの思想を説明するとともに、「史」として、社会学の発展の流れを読み解いていきます。

「社会はどうして成り立つのか?」を根本命題に、めくるめく知の冒険へと旅立ちましょう。

「社会学史」に関しては、こちらに抜粋記事がありますので、ぜひお読みください!
・ある社会学者が、急に重い鬱病を発症してから偉大な仕事をした理由
・「なぜひとは自殺するのか?」に対して、120年前に出された答え

「たとえば、戦後日本社会が独特の精神をもっているとして、そういう社会がどうしてできたのか。現実的なものも、可能的なものも、あるいは未来的なものも、過去のものも全部含めて、社会秩序についてそれがいかに可能か、可能だったのか、可能になりうるかを問う。これが社会学の一般的な主題です」(本書19p)

そして夢の5000番へ……

さて、いかがでしたでしょうか。

新書というのは、時代の潮流を受け、その時期に適したテーマをわかりやすく伝えるのが使命だと(勝手に)感じています。

思えば、『経済学はむずかしくない』が刊行された1964年は、日本が高度経済成長に入り、マルクス主義の影響もあって、人々が経済に対する強い関心を抱いた時代でした(と、199×年生まれの僕が言うのもなんですが……)。

一方、「社会学史」は、「社会」というものが非常に不安定になり、未来に対する不安が顕出された現代において、強く求められる本であると実感しています。

しかし、いくつかの本は、時代性という、ある種の消費期限を越えて、長らく読まれる力を持つことがあります。私たちも、多く、長く、読まれる本をたくさん作れるように、これからも邁進していきます(作るのは編集部の皆さまですが……)。

また、55年後にやって来る(かもしれない)、夢の5000番に向けて、これからもどうぞ、現代新書をよろしくお願いいたします!