つくばエクスプレス「基地内脱線事故」で生じる安全への懸念

気になる乗車率、遅延…大丈夫か
田中 圭太郎 プロフィール

「経年劣化」と「混雑」でトラブルが続発

つくばエクスプレスは秋葉原駅とつくば駅の間を最速45分で結ぶ路線で、踏切がないことなどから「安全と高速」を売りにしている。しかし、以前から安全面に対して「十分な対策がなされているのか」と懸念する声が社内外から上がっていた。

筆者も2017年11月時点で、ドアに手や荷物が挟まれる事案やオーバーランなどのトラブルが相次いで起こったことに触れ、背景に設備が古かったり、現場の人員が足りなかったりといったことがあるのではないかと指摘した。(『つくばエクスプレスで「トラブル多発」大丈夫か⁉︎』https://gendai.ismedia.jp/articles/-/53376

以後も、安全運行を脅かすようなトラブルがよく見られる。2018年8月6日と17日には南流山駅で突然車両のドアが閉まる事案が発生した。首都圏新都市鉄道は、問題が起きた編成の運行を取りやめて調査した結果、自動列車制御装置(ATC)内の列車の速度を監視する部分が経年劣化していたと発表している。

 

南流山駅の件以外にも、特に18年12月以降は、車両に安全面での不具合が見つかって、車両交換するケースがかなり増えている、と前出の社員は指摘する。具体的には、通過するはずの駅に突然停車する、加速しないトラブルが起きる、走行中にドアが開くなどだ。

トラブルが起きるたびに電車は停車し、運行面でも遅延などの支障が出る。twitterを確認すると、トラブルが起きている状況を複数の利用者がつぶやいていた。

また、朝の通勤時間帯では、混雑のために乗降に時間がかかり、毎日のように遅延が起きているという。2019年2月10日の東京新聞は、1月に入ってラッシュ時の乗車率が最大で300%を超えていると報じた。同様の情報は、筆者にも寄せられた。

国土交通省の発表では17年度のつくばエクスプレスの混雑率は165%。ただ、これはピーク時1時間の平均値で、朝7時45分から8時過ぎの間に六町駅から秋葉原駅に向かう便では、300%を超えて危険な状態にあるという。この混雑についても、twitterで毎日のように声があがっている。

つくばエクスプレスの1日あたりの乗客数は、開業した2005年度は約15万人。その後沿線人口が増加し、2017年度は約37万人と約2.5倍にまで増えている。この混雑と経年劣化がトラブルを招いているとの疑いがあるが、どうもそれだけではなさそうだ。

車両の大半は開業当時に導入したもの

内部の関係者によると、問題点の一つは、車両などの設備に対する会社の姿勢にあるのでは、という。つくばエクスプレスは1編成が6両。8両に増やす構想は開業当初からあるものの、これだけ乗客数が増えても6両のまま。混雑を解消できていないことで、ここに来てドアの開閉トラブルが増加し、平日の朝は毎日のように遅延が生じているという。

さらに、車両の多くは開業当時に導入したものだ。つくばエクスプレスは沿線の茨城県石岡市に気象庁の磁気観測所があり、磁気が狂うのを避けるため周辺では直流の電車を走らせることができない。そのため、秋葉原から守谷の間は直流の電車が走り、秋葉原から茨城県側の終点のつくばまでは交流の電車で運行する。

開業当時導入したのは、直流の1000系が14編成、交流の2000系が16編成の合計30編成。その後、2008年に2000系を4編成、2012年に今回脱線事故を起こした編成を含む2000系3編成を増備した。

つまり、大半は2005年の開業当時に導入されたもので、今回脱線事故を起こした編成が最も新しい。最新の車両であるにもかかわらず、不具合が発生している可能性がある、ということだ。根本的な改善がなされない理由を、社員は次のように指摘する。

「とにかく予算がないからと、すぐに新たな部品を購入するといった対策をとれません。2018年8月に南流山駅で発生した突然ドアが閉まったトラブルは、2度とも同じ編成でした。2度起きて初めて、部品を新品に交換しました。

会社は固定資産税がかかることを嫌がっているのか、備品も十分ではありません。車両が古くなっているにもかかわらず、必要な部品の買い替えや備えをしないことが、トラブルが多発している原因ではないでしょうか」