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元警察キャリアが明かす、日本を牛耳る最強権力「官邸ポリス」の正体

佐藤優はこう分析する

謀略的意図をもった著作

最近、複数の政治部記者や編集者から「佐藤さん、『官邸ポリス』についてどう思うか」と尋ねられたので、読んでみた。

小説としての完成度については見方が分かれる。ただし、「嘘のようなほんとうの話」と「ほんとうのような嘘の話」を適宜ブレンドした謀略的意図をもった著作であることは間違いない。

文部科学事務次官の風俗店通い、大阪の私立小学校への国有地払い下げ問題など、登場人物が誰をモデルにしているかも、すぐにわかる構成になっている。小説と言うよりも、怪文書に近いノンフィクションと性格づけた方がいい。

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日本国家を実質的に運営するのは有象無象の国民によって選ばれた政治家ではなく、難しい採用試験に合格した頭脳明晰でかつしっかりした国家観を持つ警察官僚が行うべきだという「首相機関説」とも言うべき思想に依拠した、官邸の警察出身官僚が国家を牛耳っているという筋書きだ。

元警察キャリア官僚という触れ込みの著者は、「首相機関説」に対して肯定的だが、警察出身の瀬戸弘和・内閣官房副長官と工藤茂雄・内閣情報官に対して「怖くて嫌な人間だ」という印象を植え付けるように腐心している。

 

警察は大所帯なので、組織内の派閥抗争と嫉妬がこの本を生み出す原動力になっていると思う。

<二〇一五年六月上旬のある日、工藤内閣情報官は瀬戸内閣官房副長官の執務室にいた。二人は執務机の前にある応接セットで、テーブルをはさみ、ソファに座っていた。テーブルには、新聞の朝刊が無造作に開かれている。

「日本年金機構、年金加入者の個人情報約一二五万件を流出、業務パソコンに送付されたメールの添付ファイルを安易に開封してウイルスに感染したか……」

「重い肺炎を引き起こすMERSコロナウイルスの感染による死者が増え……」

瀬戸副長官は、それらの記事を指さしながら断言する。

「こういう事件が起きないようにできるか、そして不幸にも起きてしまったときに上手に対処できるかどうか、それが国力だ」

普段はクールな瀬戸の声は熱を帯び始め、ヒートアップしていく。

「とにかく、民生党がめちゃくちゃにした、この国の土台を盤石のものにするためには、日本国の守護神たる官邸ポリスを、一日も早く完成させなければならない」

その表情は真剣そのものだ。瀬戸はデスクの背後の壁に張ってある日の丸と旭日章の旗を見上げる。何かを考えているときの癖だ。

「……現政権のうちに、多部総理に権力を集中するとともに、総理の我々に対する信頼度を上げていかなければならない」

工藤が相槌を打つ暇もない。瀬戸の熱弁は続く。

「多部総理は、まだまだ官僚に対しては批判的だ。少なくとも内務官僚は違う、ということを示さなければいけない。役人だろうが、マスコミだろうが、民間人だろうが、うまく我々の味方に付けて活用していく。逆に、逆らう人間は懲らしめて浮かび上がれないようにするのだ」>