孤高の格闘家・青木真也が説く「勝率1%でも勝つ方法」

怖さを克服して「動く」
石川 香苗子 プロフィール

幸せをわきまえる

――格闘技の世界の外にいる人たちは、どうやってその「輝けるリング」を見つければいいでしょう。

青木 わきまえることが大事だと思います。僕は静岡の小さな町工場の息子として生まれて、東京に出てきて、割と地に足つけて生活している方なんですけど、自分がそんなにいいところの出じゃないっていつも意識しているんです。

だから、ある程度の幸せみたいなものはわきまえているつもりです。誰もが上に行く必要はないと思うし、それが幸せだとも思わない。自分の出自とか能力に見合っていないことをしてるイケイケなやつって、ダセーなと思います。逆に、下にいる人間が努力すれば必ず上に行けるって思うのもつらいと思うんですよね。現実は、そうじゃないし。

最近のソーシャルメディアって、自分たちよりいい仕事をしている人が可視化されているじゃないですか。Facebookなんて”仕事のご報告掲示板”みたいになっているし。もう、大技連発みたいな感じですよね。みんな”かまし”になっちゃって。そんななかで蔓延する「頑張れば上に行ける、上に行けば行ったほど幸せ」みたいな価値観はおかしいと思います。

 

僕は、自分がつくりたいものとか、やりたいことがあって、そこにどれだけ近づけるかを考える方が豊かじゃない? って思っちゃうんですよね。お前にできなくて、俺にしかできないことがあるだろうって思うんです。

いまいちばん感じている恐怖ですか? 3月31日に試合を控えていて、それも怖いと言えば怖いんだけれど、いまは「格闘家人生をやり切れるか」っていう”恐怖”がものすごくありますね。自分自身が求めていることをやり切って、完全燃焼できるのかなって。あれやっとけばよかったとか、もっとできたのにと思った状態でやめたくはないんですよね。

40歳をすぎて収入が追いつかなくなって、最後の2、3年は格闘家としての収支は赤字になったとしても、やり切って悔いなく終わりたい。格闘家としてやり切れたら、その一年後に死にたい。ずっとそう言っています。

これから選手生活を終えていく中で、その次にやりたいことを見つける作業をしていきたいですね。じゃないと、本当に死ななきゃいけなくなりますから(笑)。

(取材・文/石川香苗子、撮影/村上庄吾)

■プロフィール 青木真也 SHINNYA AOKI
1983年5月9日生まれ。静岡県出身。小学生の頃から柔道を始め、2002年に全日本ジュニア強化選手に選抜される。早稲田大学在学中に、柔道から総合格闘技に転身。「修斗」ミドル級世界王座を獲得。大学卒業後、静岡県警に就職するも2カ月で退職して再び総合格闘家の道へ。「DREAM」「ONE FC」で世界ライト級チャンピオンに輝く。最新著に『ストロング本能』(KADOKAWA)。