孤高の格闘家・青木真也が説く「勝率1%でも勝つ方法」

怖さを克服して「動く」

「組織のしがらみに縛られるのはイヤだけど、一人になるのは怖い」

「若手と呼ばれる時期はとうに過ぎてしまった。自分はこれから、何かを為すことができるのだろうか……」

そんな悩みを持つ人は、孤高の総合格闘家・青木真也の生き方から学ぶといい。デビューから15年。誰にも流されず、自分で自分の居場所を作り続けてきた青木真也が上梓した『ストロング本能』には、怖さを克服して「動く」ための考え方、アイデア、ヒントが詰まっている。

3月31日、初めて日本で開催されるアジア最大級の総合格闘技イベント『ONE Championship』で、ライト級王座の奪回を狙う青木真也に、怖さとの向き合い方、周りに流されず、自分の器を信じて動くための極意を聞いた。

誰でもみんな、平等に怖い

――今回発売された『ストロング本能』を読むと、青木さんは、失うことへの怖さがまったくないんじゃないかと感じました。

青木さんと同世代である30代半ばの人たちは、新しいポジションを築いたり、なにかを生み出すために「動かなきゃいけない」と思っているものの、自分が動くことで何かを失うことが怖い、という潜在的な恐怖を持っています。

試合前、あるいは新しいチャレンジを行うとき、青木さんの中には「怖さ」が生まれないのか、あるいは、恐怖をどうコントロールしているか、教えて下さい。

青木 いや、僕だって試合前には怖くなりますよ。恐怖はみんな平等に感じている。これが僕の持論です。

要は、そのマネジメントが上手かどうか、なんです。格闘技って、試合そのものも怖いですし、たった一つのミスで体が壊れてしまうこともあります。最悪の場合、命を失うかもしれない。一つ一つのリスクが、ものすごく大きい。そういうことを冷静に考えれば考えるほど、怖くなります。もう試合に出るのをやめようかな……と思う時も何度もありました。

でも、やる。やらなければ、負けないかわりに勝つこともないからです。

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当たり前ですけど、試合って相手が殴ってくる。殴られるのって、怖いですよ。でも、試合中にその恐怖をそのまま受け止めていたら、萎縮してしまうだけです。

そういう時は、視点を真逆にする。自分が怖いということは、相手も恐怖を感じていて、僕に組まれたくないって思っている。恐怖は平等。このことが分かると、恐怖をコントロールする心の余裕が生まれます。僕の場合、こうやって恐怖に向き合うことから始めます。

 

これまでいろんな選手を見てきましたが、やっぱりみんな試合前は恐怖を感じている。ただ、そのコントロールの仕方は人によって全然違うんです。試合直前、儀式のように左右のグローブを逆につけるやつもいれば、自分が強いことを確認しないとリングに上がれないやつもいる。控室で、試合前に流れる相手選手の煽り映像を観て、こんなヤツに負けるか! と気分を高めるやつもいる。

怖さから逃げるやつと向き合うやつ、どちらもいて、みんな一緒だと思うんですよね。だから、いかに自分をだまして乗り切るかが腕なんじゃないかと思います。

「自分だけが恵まれていない」「不利だ」。勝負の前に、人はどうしてもそう思いがちですけど、相手のなにが怖いのかをひとつひとつ整理して考えると、ずいぶん楽になれると思います。

だから相手にプレッシャーをかけるし、はったりをかますし、虚勢を張る。本当はボロボロでも、完全なように見せかける。僕の場合は、「俺はできない」ということを自覚しているからこそ、「俺はできる!」ってだましてリングに上がります。自分に嘘をつく。嘘をつくことは悪いことじゃないので。

それから、経験上、入場のどれぐらい前から不安になるかは分かっているから、何分前になったら誰かの手を握らせてもらおうとか、このタイミングでセコンドと抱き合おうと決めておき、それをやることで安心する。

水を飲む、叫ぶ、誰かに当たる。そういうことをルーティーンにすることで、怖さをコントロールしています。自分なりのルーティーンを見つけるといいんじゃないかと思います。

ビジネスマンだって同じですよ。大事なプレゼンがあるとか、商談があるとかいう場合、仕事に行く前に叫ぶといい。声に出さなくても、自分の中で何かを叫ぶ。あるいは運動をする、汗をかく。体を動かすことって本能に近いので、気持ちがすっきりすると思います。

こんな風に、自分が格闘技の世界で実践していることで、ビジネスに横移動したら活用できるなと思うことがたくさんあるんです。コンディションのことだったり、生きていくうえでのテクニックだったり。そういうことを多くの人に広めたいと思って、この本を書きました。