古くより神様との縁が深い山陰では、今も神話や伝承が残る不思議スポットがたくさん。そんな場所ばかりを集めたミステリーツアーへ、民俗学者の小泉凡さんがご案内します。

教えてくれたのは……
小泉凡さん
小泉八雲記念館館長、焼津小泉八雲記念館名誉館長、島根県立大学短期大学部名誉教授。妖怪、怪談を切り口に、文化資源を発掘し観光・文化創造に活かす実践研究や、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の思考を社会に活かすべく世界各地で活動。著書に『民俗学者・小泉八雲』ほか多数。小泉八雲の曾孫。

海に向かってひしめき合う
日本最大級の自然発生墓地

花見潟墓地(鳥取県東伯郡琴浦町)

海沿いに東西およそ350mも広がる巨大墓地。立ち並ぶ墓石、その数2万以上。自然発生した墓地としては日本最大級。その起源は不明だが、古いものでは鎌倉時代築造の石塔もあり、刻まれた文字がすっかり風化してしまったものも多い。灯籠が灯されるお盆には、無数の火が浮かび上がり幻想的。小泉八雲もこの墓石群を人力車で駆けており、「こうして今私たちが通り抜けている所は、大地が誕生した時から、この風の吹きすさぶ浜に暮らしてきた人々がことごとく埋葬されている墓地の中であるかのようだ」※と記している。※池田雅之訳「日本海に沿って」(『新編 日本の面影』所収)

「墓地のある琴浦は八雲が新婚旅行で訪れた町で、周辺には作品のモチーフになったスポットが多数。そんな場所を巡るミステリーツアーや琵琶弾奏と語りによる怪談パフォーマンスが、琴ノ浦まちおこしの会により開かれています。」

赤ちゃん連れはタブー?
恐怖の “幽霊滝”

幽霊滝/龍王滝(鳥取県日野郡日野町)

瀧山神社の境内にある龍王滝に2歳の幼児を連れて参ると首がなくなる、という地元の伝承を元に、小泉八雲はここを舞台に「幽霊滝」(『骨董』所収)という怪談を書いた。物語は、麻取り場で持ち上がった悪巧みから始まる。「幽霊滝へ行って賽銭箱を持ち帰った者に、今日収穫できた麻を全部あげよう」。肝試しを買って出たのは、お勝という気丈な女。その結果お勝は賽銭箱を持ち帰ることに成功。ところが、女がおぶっていた赤ん坊から血が滴り落ちてきて……というお話。
 

「車道から10分ほど歩きます。山道を分け入っていくと、異界への畏怖の念を抱くというか、怖い……です。とくに水量が多くなる雨の後は轟音が響きます。ちなみに、もともと地元の伝承では天狗がいたといわれています。」

日本最古の鬼伝説が
残る鬼だらけの町

伯耆町全域(鳥取県西伯郡伯耆町)

第七代孝霊天皇が鬼退治をした伝説が残る町。鬼の住処といわれた鬼住山や孝霊天皇が鬼退治の際に陣を張ったとされる聖地、笹苞山がある。鬼をシンボルにした公園「おにっ子ランド」は残念ながら数年前に閉園。今は巨大な鬼の像だけが、街を見下ろすように静かに鎮座している。
 

「鬼で町おこしをしている珍しい町です。この巨大な鬼の他にも、鬼のトイレに鬼の電話ボックス、四方に10体の鬼の像がある鬼守橋など、町の各所に鬼の造形がみられます。」

どんな恋も叶えます!?
神だのみならぬ、うさぎだのみ

白兎神社(鳥取県鳥取市白兎)

『古事記』の神話「因幡の白兎」ゆかりの地。昔、出雲の国の大国主命が皮を剥ぎ取られた一匹のうさぎを救ったところ、その恩返しに因幡の国の美しい姫・八上姫と結ばれた、という話。白兎神を主神とし、うさぎの石像が並ぶ参道や白うさぎみくじ、うさぎまもりもある。
 

© 鳥取県

「日本最古の恋物語ともいわれる神話にちなんだ縁結びの神として、女性に大変人気です。加えて、皮膚病や火傷に霊験あらたかな神様が鎮座する神社でもあります。」

妖怪名所がいっぱい!
水木しげるの故郷、境港

境港市全域(鳥取県境港市)

©水木プロ

『ゲゲゲの鬼太郎』の作者であり妖怪研究家でもあった水木しげるの故郷・境港市には、妖怪名所が点在する。水木さんの激動の人生を振り返る展示や仕事部屋が再現された「水木しげる記念館」に、177体の妖怪ブロンズ像が並ぶ「水木しげるロード」(写真は夜間のライトアップ)、妖怪を祀る「妖怪神社」なるものまで!
 

©水木プロ

一反もめんの鳥居をくぐると、境内には巨大な御影石と樹齢300年のケヤキを組み合わせた御神体がある。実際に水木さんが入魂した御神体から漂う妖気が、訪れる者を癒やしてくれる(はず)。
 

©水木プロ

「水木さんは妖怪で八雲は幽霊と、モチーフは異なりますが、目に見えないものを信じることの重要性を説いた点で2人は共通しています。両者の妖怪観は、人間中心主義への警告という意味でもよく響き合っています。」

思わず赤面!? 縁と子宝運ぶ
ありがた~い御神木

木の根神社(鳥取県西伯郡大山町)

男性器を象徴する老松の根を御神体とする神社。「木の根さん」「への子松」の愛称でも親しまれている。ほの暗い社殿の中に、その木の根と男性器型の奉納品が祀られている。夫婦円満や子宝祈願に全国から参拝者が訪れ、成就した際には赤い腰巻きを奉納する習わしも。
 

「性器崇拝は、昔は日本を含め多くの民族に共通していました。現代では廃れてしまったので、こうして残っているのは貴重。近くの店で売っている御神体そっくりのまんじゅうも人気です。」

神の使いの狐が出入りする穴

下山神社(鳥取県西伯郡大山町)

山岳信仰の一大霊峰として、2018年に開山1300年を迎えた大山。その中腹に立つ大山寺の奥の院である下山神社は、稲荷神を祀るおいなりさん。社殿の壁には狐穴と呼ばれる穴が開いており、稲荷神の使いである白狐が出入りし、里の様子を神に伝えているんだとか。
 

© 鳥取県

「大山寺までは人も多いですが、その奥の院となる大神山神社、下山神社まで足を延ばすと一気に静かに。少し体力は要りますが、美しい大山の自然を肌で感じられるルートでもあります。」

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●情報は、FRaU2018年12月号発売時点のものです。
Illustration:Mizmaru Kawahara Text&edit:Yu Ikeo