文・構成/平原悟
いつ始めても構わない
横山 はじめて運用する時、多くの人が心配することの一つが、今は投資に適しているのかどうかです。それについて中野さんはどう思いますか?

中野 『はじめての人が投資信託で成功する たった一つの方法』などでも書いていますが、これに対する答えは決まっていて、いつ始めても構わないのが僕の持論です。
タイミングが気になるのは、一度に大金を投資しようとするから。下手をすると高値をつかみ長期間にわたり含み損を抱えてしまう危険がある。それは事実ですが、積立投資ならそのリスクを大幅に軽減できます。特に今の時期は、積立投資しかやるべきではないと思っています。
横山 それは相場が不安定な状況がしばらく続くと言うことですか。
中野 なにしろ米国の大統領はトランプさんでしょ(笑)。アメリカ経済自体は悪くないのですが、そこで無理にエンジンを吹かしているので、反動は必ず来ますよ。既にマーケットもそれを折り込み始めた。具体的には昨年2018年10月以降、マーケットが上げなくなったのは、経済が減速基調入りしたことを感じているからです。
横山 経済統計にもそれは現れ始めましたね。
中野 その原因はなにか。それはもっぱら米中貿易戦争。その成り行きはどうなるかわからない。だから多くの企業が設備投資を躊躇しはじめた。しかも、こうした状況で影響を受けるのは中国が一番だが、ブーメランのように米国にも返ってくる。トランプさんの減税効果がまだ効いているからなんとか持っていますが、それもやがて力尽きますよ。
横山 アメリカ経済はリーマンショックから10年以降好調が続いてきた。そろそろ一旦調整が来るのはむしろ当然ですね。
中野 しかも米国の株式市場はファンドが主導して大はしゃぎしすぎた。これからは5Gだ、IoTだ、自動運転だ、こんなに成長すると成長を先取りして株を買ってきた。ただ、足下の業績はそんなに簡単に増えないから、そのギャップを埋める調整が起きる。
恐らくこの水準調整が今後1年は続くのではないでしょうか。そのためか、アメリカの投信マーケットで、米国株に投資するファンドで資金流出が続いている。これがグローバルポートフォリオに向かっている。さすがのアメリカ人もアメリカがこれまで通り成長するとは思わなくなっているのだろう。グローバルに投資するのは僕ら二人だけではなく、世界全体の潮流になっている(笑)。