「100年先まで残る作品を作る」というプライドを持って

フラメンコはもとより、その土地ならではの文化に、並々ならぬ興味がある。2000年頃から、山口さんは旅の映像シリーズの制作に着手し、意欲的に未知の土地を訪れるようになる。そして40代になると、日本の職人のもの作りの世界に惹かれ、日本各地を訪れ、使い手の笑顔のために労を惜しまぬ職人のエンターテイメント精神を追った。作り手と使い手をダイレクトに結びつけたいという思いから、伝統工芸品のセレクトショップをオープンしていたこともある。

「自分は『ほんとうに何も知らない』という事実に直面すると、猛烈に新しい世界を学びたくなる。その連続です。日本人でありながら、日本のもの作りの極意を知ることもなく、のほほんと40年も生きてきたことに啞然としました。言い訳がきかない、生み出す〝形〞で潔く勝負する職人さんたちは、ほんとうにカッコいいと思います。

いいものを生み出す職人さんは、語らせても超一流で、お話も最高に面白い。使い手の幸福のために、時間をかけて技を磨いて向上していく精神は、まさにエンターテイメントだなと思いました。これは、私が関わってきたテレビの世界でも全く同じこと。人々の暮らしを楽しく幸せにしていくものを、夢ある形で手渡していきたい。

職人さんのもの作りの精神を通して、私自身の本当にやりたいことが見えてきたように感じました。良い素材から時間をかけて、長く愛されるものを生み出していく仕事がしたい。『明日、明後日出す答えだけで、勝負しなくていいんだ』と、心がすーっと軽くなりました。売り上げとか視聴率とか、短期的な判断基準だけじゃない、もっと長期的な視野に立った、人の心に残る判断基準があってもいはずだと。早く結果を出すことだけがすべてじゃないと思います」