理想を持って突っ走らない

「40歳での出産でしたから、周りの友達から体力的に大変だといろいろ聞かされ、覚悟をしていました。でも、産んで気づいたのは、20代や30代でなくてよかったなということ。

私はまじめすぎるところがあるので、理想を作るとそれに向かってわーっとつっ走ってしまいます。理想から少しでも外れるとまた、わーっとパニックになりやすい。そのへん、この年齢なのでゆるくフレキシブルになりましたし、臨機応変、しなやかでありたいと自然にこころがけるようになりました。とはいえまだ硬いので、もっともっとしなやかになりたいですが」

たとえば執筆時間をきっちり決めても、子ども次第でその通りに机に向かえないことも多々ある。そういうとき、「エグいほど」(西さん)気持ちが焦り、取り乱すので、「書けないときは、書かなくてもいいと思うことにしました」

子どもが0歳のいまは連載は控え、書き下ろしの長編だけを、「書けるときに書く」。家族の状況に合わせ、軌道修正を繰り返しながら、心地のいい落とし所を探っている最中だ。

「2ヵ月前に、家では書かないと決めたばかりです。書きかけても子どもが泣いたり、ストレスが募るだけなので。書きたいのに書けないという焦りがないかと言ったら嘘になります。作家やミュージシャンのママ友に相談したら、“この潜伏期間が大事やで” と言われて。“今がんばったら、創作の時間が出来たときの開放感がすごいから” って。私も自由に書けるのを今から楽しみにしているんです」

PROFILE

西加奈子 Nishi Kanako
1977年、テヘラン生まれ。小1~5年までカイロ、以降は大阪で育つ。2004年、『あおい』で小説家としてデビュー。’07年に『通天閣』で織田作之助賞、’13年に『ふくわらい』で河合隼雄物語賞、’15年に『サラバ!』で直木賞を受賞。近著に『i』がある。’12年、編集者と結婚。’17年7月出産。ベビーシッターの手を借りつつ、仕事と育児を両立中。

●情報は、FRaU2018年3月号発売時点のものです。
PHOTO:Shin Suzuki TEXT:Kazue Ohdaira