正直に生きて笑われる方がいい

小説家になって13年。今、西さんは小説との対峙のしかたをこう語る。それはまさにプロレスから教わった人生の指針でもある。

「突っこむ側になるのではなく、突っこまれ、ジャッジされる側になろう。作家だと名乗ることを恥じないでいこう。小説家であり続ける自分を信じて、いつもリングの真ん中に立てる人間であろうと思っています」

かっこ悪いことはかっこいい。そう気づくのに長い時間がかかった。現在41歳の西さんは、20代の頃の自分を思い出すと「あちゃっ。恥ずかしい」と赤面してしまうらしい。

「カッコつけて、照れて、ちょっと斜に構えていたんですよね。正直に話して笑われたら嫌だなって思っていたんでしょう。そう、実際、正直でいると笑われることもある。でも、かっこつけてうそつくのはダサい生き方だと思う。

たとえば、若い頃、人に褒められたら、いえいえってすぐ言ってたんです。ありがとうございます、って答えたら、“この人、褒め言葉を鵜呑みにしているわ” って思われるのがいやだから。でも今は、それは違うと思います。正直にありがとうと言って、笑われる方がずっといい」

浅いところをすくって「ハイ、新刊できました」も、依頼が引きを切らない彼女なら、できなくはないだろう。だが、それは自分に嘘をついたことになる。

「自分が手を抜くことがいちばんつらい。いいと思っていないのですから。自分に正直に、全力で挑む。それで負けて笑われても、けしてかっこ悪いことではない。笑う人がいても気にしないし、笑っている人の人生のほうがつらいだろうなって思います」

ネットで誰かを貶めるような書き込みをしなければ生きていらない人がいるとすれば、それは「気の毒すぎる」と、言う。

「そんなことに時間を費やすのはその人の命がもったいない。その人の人生の意味を考えてしまいますね。確実に、笑われて生きるほうが、健康的です」

リングの真ん中に立ち、突っこまれる人生を選んだ。戦う相手はおそらく、自分だ。笑われてもいいから全力で闘う。

満身創痍でつむぐ作品1冊ごとに、小説家としての厚みを増してきた西さんは、2012年結婚。プライベートでは、心強い人生のパートナーを得た。そして2017年7月、待望の第一子を出産。その子育てにも、彼女独特の家族観、人生観が投影されている。