「やりたいことをやりなさい」それが祖母の言いつけでした

それから20年以上が経ち、彼女は日本を代表する女優となった。しかも、美しさをそなえつつエキセントリックな役柄もこなせる希有な役者。気の強い女性だったり、高飛車な女性だったり、教育ママだったり、映画『告白』(’10年)やドラマ『名前をなくした女神』(’11年)で演じたような、いわゆる「嫌な女」だったり。そういった役どころを演じれば、彼女の右に出るものはいないんじゃないかと思うほどハマっている。もちろん、当たり前だけど、本来の彼女はそんな女性とは正反対。

今回の取材を通して感じるのは、木村佳乃という女性は天真爛漫であるということ。『真田丸』で演じた松が限りなく素に近いのではないかなと思う。三谷幸喜氏は役を「当て書き」する作家だというけれど、彼女の本質をよく見抜いていたんだなあとあらためて感心してしまう。

「よく言いますよね、悪い人間を演じるほうがやりがいがあるって。俳優さんのインタビューを読むと。なので、昔から、悪い役への憧れはありました。やってみたいなと常に思っていたと思います」

――でもそうすると、世間の目が気になりませんか? イヤミな女だと思われるんじゃないだろうかとか。

「でもそれは役柄ですから。気にならないです。しかも、視聴者の方々は目が肥えています。昔の女優さんのように、素を全く表に出さないということはなかなか少なくなってきました。良くも悪くも、SNSで何でも拡散されてしまう時代ですから、素はどうしても透けて見えてしまう。だから、作品として魅力的であれば、それでいいかなって。

でも、そういった役を演じることがつらいことももちろんあるんですね。以前、『CO移植コーディネーター』(’11年)というドラマに出たんですが、子どもの臓器移植の話で、私は子どもをネグレクトする母親役を演じたんです。それは精神的にきつかった。非常に意義のある奥深い話でしたけれど、やるほうは大変。

私は役を引きずるほうではないんですが、『告白』のときもそうでしたが気が滅入ってしまって。『告白』は息子に刺される母親の役で、しかもあのとき、息子に刺されるシーンを撮影している最中に体調を崩してしまって……。

あのとき、出演者の間でインフルエンザが大流行したんです。なんだかすごくグッタリして、こういう役は気が重くなるからなあと思っていたら、実はインフルエンザだったっていう(笑)。

ちょうど息子に刺されるシーンの撮影のとき、あまりにもだるくて熱を測ったら39度ぐらいになっていて。撮影を切り上げて途中で帰ることになったんです。助監督さんに『いいご報告をお待ちしております!』と言われて。そのとき、頭がボーッとしていて全然まわってなくて、この人、私が妊娠したと思ってるのかしらってものすごく恥ずかしくなっちゃって、『やだ! なに言ってるんですか!』って。助監督さんは単に、インフルエンザの陰性を願っていただけだったんです(笑)