写真:西田英俊
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なぜ強いのか? 達川光男氏が初めて明かす「広島力」のすべて

全力疾走と凡事徹底で日本一を!
ご存じ達川光男氏が、2019年のプロ野球シーズン開幕前に初めての著書を刊行。その名も『広島力』(構成:赤坂英一氏)。内外から見たカープの強さ、また、個性的で魅力的な選手を次々と輩出する広島という地域の力について余すところなく語ると共に、35年ぶりの日本一を目指すカープにエールを贈る。刊行を記念して同書の「はじめに」を特別公開する。

4連覇の可能性は「十分」!

今年も広島東洋カープは強い。セ・リーグを4連覇する可能性は十分ある。もちろん、勝負は水物であり、時の運に左右される部分も少なくはないが、ここ数年はカープの時代が続くじゃろう。

わし……言うちゃいけんが、私にとって人生で初めての本を上梓するにあたり、まずそのことを強調しておきたい。あのね、カープの強さは本物ですよ。いまの選手たちはモノが違います。

私がカープのキャッチャーだったころも、何度か優勝し、日本一にもなったけど、最後のゴールに辿り着いたころにはもうヘロヘロになっとった。その点、いまの選手はみんな若いし、体格はええし、愛想がよくて人間ができていてしっかりしとるわ。いや、個人差はあるけどね、そりゃ。

 

不動の3番センター、丸佳浩の離脱は確かに大きな痛手じゃった。2017年、18年と、2年連続でMVPを獲得した中心選手がFA宣言し、読売巨人軍に移籍。2年連続打率3割台、3年連続90打点以上という好成績に加えて、昨季リーグ最高の出塁率4割6分8厘をマークした中心打者の穴は、とてつもなく大きい。

しかし、敵としての丸は、決して抑えられないバッターではありませんよ。現に、私がヘッドコーチを務めていた福岡ソフトバンクホークスは、昨年日本シリーズで丸を25打数4安打、打率1割6分に封じ込んだ。

あのときは、事前に丸のデータを分析し、こういう傾向があるからこういうふうに攻めましょう、と首脳陣、バッテリー陣、スコアラー陣が話し合っとったんです。そうしたら、われわれが予想した通りの結果が出た。具体的なことを明かすのは控えますが、カープは丸攻略のヒントをつかんでいるはず。無論、丸も対策を練っとるじゃろうけどね。

写真:西田英俊

しかし、これまでに何人もそういう大きな穴を埋める選手を育て、窮地をしのぎ、底力をつけてきたのが、カープというチームなのです。

過去の歴史を振り返ってもわかる通り、江藤智が00年に巨人へFA移籍したら、金本知憲が4番を打つようになった。その金本が03年にまたFAで阪神タイガースに去ると、今度は球団ぐるみ、チームぐるみで新井貴浩を主砲へと育て上げた。その新井まで08年にFA宣言し、金本を追って阪神に行ってしもうたあとも、栗原健太が日本代表の侍ジャパンに呼ばれるほどの主力打者に成長しておる。

彼ら選手たち自身が、這い上がるために誰にも負けないぐらい努力をしていたのも事実です。が、こうした人材育成、チーム作りの背景には、カープならでは、もっと言うなら広島という土地や地域社会をも含めた大きな力が働いているんじゃないか、と私は思う。言うなれば、「カープ力」、もっと広い意味での「広島力」とでも呼ぶべきものが。

巨人・丸vs.カープ・“赤長野”

そういう下地や地力があることに加えて、今年のカープは、丸の人的補償で巨人の中心打者だった長野久義を獲得している。かつてはとにかく生え抜きの育成一辺倒だった球団が、波紋や反響を広げるかもしれないことを覚悟の上で、長野という巨人の代名詞みたいな選手に、あえて赤いユニフォームを着せることを決断した。

昔のカープはしばしば、その年の優勝よりも数年先を見据えた戦いをしていた。例えば、金本、新井らを一人前にするべく、目先の勝ちよりも我慢の選手起用を優先していた時期もあったもんじゃがね。

広島という土地柄は大らかで懐の深いところがあって、移籍してきた選手が活躍した例もちゃんとある。最近で言えば、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)の主力打者だった石井琢朗も、カープに在籍していた09~17年はチームにも広島にもしっかり馴染んどった。大竹寛の人的補償で14年に巨人からカープに移籍した一岡竜司も、いまじゃすっかり赤いユニフォームが似合うようになっている。

地元広島の人間たちも、いまや全国におるカープファンも、長野獲得を喜んでいる。

今回の長野獲得は、カープファンをして「4連覇もあるぞ、日本一もいけるぞ」と、その気にさせた。これは大きい。ご存じのように、マツダスタジアムでのカープ戦はいつも、三塁側のビジター応援席を除いて、カープファンで真っ赤に染まる。そこで長野がヒーローとなるような活躍をしたら、これはすごいよ、メチャメチャ盛り上がるで。