愛知県蒲郡市にある100年の歴史を誇る由緒あるホテル、蒲郡クラシックホテルを、ファッションディレクターであり、スタイリストでもある原由美子さんが訪ねました。和と洋が優雅に、ごく自然に融合するクラシックホテル。短い滞在ながら、その美しさと心地よさを満喫しました。
 

知らなかった名古屋に触れる。
名古屋って楽しい。

見て回るのが好きだという。/大須観音骨董市 愛知県名古屋市中区大須 2-21-47 当日連絡先☎052-731-5586

さて、ホテルを後にし、車を駆って名古屋へ。1時間ほどで着くと、今回のもう一つの楽しみだった、大須観音の骨董市へ。月に2回開かれる、その日に合わせて旅のスケジュールも決めてきた。

原さんにとって名古屋は、年に一度、もう20年通ってきた場所だ。ファッションデザイナーの登竜門、「ナゴヤファッションコンテスト」の審査員として、審査をするためである。にもかかわらず、毎回審査が終われば、その日のうちに東京に帰ってしまうから、名古屋のことは何もわからないという。

「道幅が広いのは、有事の際に滑走路としても使うためらしい」とか、耳で仕入れた雑学的な知識はあるものの、何も体験はしていないという不思議な関係の場所だったのだ。それゆえ、今回の旅では、名古屋を肌で感じたいと、積極的に動いてみることに。

大須観音の本堂伽藍。立派な建物だ。

骨董市の開かれる大須観音は、真言宗智山派の別格本山。元亨4(1324)年創建の北野天満宮の別当寺である。それを、名古屋城築城の際に現在の場所に移転したものだ。日本三大観音の一つといわれる由緒正しい寺院である。

骨董市は、その赤く大きな伽藍の前で開かれる。「今は徐々に終活を始めたところ。だから、物を増やしたくはないんだけど、見てみたいし、もしも掘り出し物があったらやっぱり欲しい」と原さん。とくに、きものは見てみたいという。

たくさんの出店がある骨董市の中でも、きものを出品する店はそうはない。でも、原さん、ちらっと見ているだけのようなのにしっかりチェックしています。

「あの銘仙、いい色ね」

え、どれですか。遠くを指差して、「あそこの端から3番目」。

その鋭い鑑識眼に驚く。たまに、端布を買ったりすることもあるのだという。

大須観音の骨董市にて。原さんが手にしているのは、瑠璃の皿。北欧の皿にも通ずるような美しく淡い瑠璃色。「ペカッと強い色が多いけれど、これはいいですねぇ」と言いながら、お買い上げ。最高の旅の思い出になった。

そんな中、原さん、奥まった場所にある店で、一枚の小ぶりの瑠璃の皿に目が留まった。盛んに矯めつ眇めつしている。裏表とも瑠璃色一色。「それ、江戸中期の伊万里です」と、若い店主。

「きれいですね。これなら、和でも洋でも使えそう。お取り皿にもなるし、ケーキをのせてもいいですよね」

4枚ある中から選びに選んで、2枚をお買い上げ。「せっかくだから旅の思い出に」と。

『週刊平凡』を見つけ、思わず手に取る。

さらにあちこち見て回っていると、古い古い『週刊平凡』を発見。

「これ、堀内さんのデザインだわ」

故・堀内誠一さんはグラフィックデザイナーであり、絵本作家でもある。マガジンハウスから刊行の『アンアン』はじめ、『ポパイ』『ブルータス』などのロゴタイプをデザインした人物でもある。

原さんの著書『原由美子の仕事1970→』(ブックマン社)にも登場する。いうなれば、戦後日本のファッションを牽引してきた偉大な先輩でもある。

こういう懐かしいものに触れると、瞬時にその時代にタイムスリップする。十分にそんな気分を満喫したのち、いよいよ、待ってました、なフード散策へ。