愛知県蒲郡市にある100年の歴史を誇る由緒あるホテル、蒲郡クラシックホテルを、ファッションディレクターであり、スタイリストでもある原由美子さんが訪ねました。和と洋が優雅に、ごく自然に融合するクラシックホテル。短い滞在ながら、その美しさと心地よさを満喫しました。

ホテル黎明期の和と洋
融合の美を肌で感じる。

1階から吹き抜けを見上げる。回廊の手すりが美しい。こんなところにまで細工が施されていることに感心。

創業当初から変わらないというガラスの扉を開けて中に入ると、何から何までがクラシック。そして、和と洋が綯い交ぜになった、何とも雰囲気のいい空間が広がる。

まず、エレベーター。エレベーター自体は新しいものだというが、指針盤は昔のまま。昭和初期に流行ったアールデコのデザイン。いい雰囲気だ。吹き抜けのロビーに並ぶ柱の立派なこと。1階部分は四角いのに、2階になると丸いのだ。

2階の円柱にも細工あり。

その太さに驚かされる。「その昔、話に聞いていた通り。ほんとうに、旅をしているという気分にさせてくれますね」と、原さん。見上げると、回廊の手すりも、アールデコの直線的な細工が見てとれる。

2階から3階に続く階段の窓にあるステンドグラス。美しい透明感。今見ても古くないデザインだ。

2階から3階に上がる階段には、美しいステンドグラスが。

「こんなにシンプルでシックな色の組み合わせは初めて。素敵ですね。ただ、エレベーターで3階まで上がってしまうと気がつかない方がいるかも」

世界のセレブリティが宿泊したというロイヤルスイートルーム。三方に窓あり。カーテンを開けると目の前に竹島が見える。優雅なステイが約束されているここが、本日の原さんの宿泊する部屋だ。

原さんの今宵の部屋は、この階段を上がってすぐの、ロイヤルスイートルーム。蒲郡ホテル時代の風情が残るこの部屋からは、竹島を目の前に眺めることができる上、このホテルで唯一のバルコニーがあり、いながらにして海風を感じることができる。

1934年、静岡で日米野球が開催された際、静岡・草薙球場での試合後、ベーブルース夫妻が宿泊した部屋でもあるという。三河湾の夕暮れも朝焼けも、ひとり占めできる。

ロイヤルスイートルームの寝室。寝心地よし。

「じゃあ、優雅に休ませていただきます。おやすみなさい」

そう言うと、原さん、静かにドアを閉めた。

朝早く、竹島海岸を散歩する。風が強い。海の近くで育った原さんにとっては、海辺の散歩はノスタルジックなものでもあろう。今日は、原さんを歓迎するように、ものすごい数のゆりかもめが飛ぶ。

ゆっくりとリラックスできた翌朝は、ゆりかもめと鳩が舞う中、浜辺を散歩。竹島へ渡る橋のたもとで、おしゃべりする地元のおじさまグループも気さくに話しかける。東京ではなかなかできないことだ。このあたり、春には潮干狩りで大変な賑わいを見せるそうだ。

昔の面影を受け継ぐメインダイニング。朝食はここでいただく。

蒲郡クラシックホテル
愛知県蒲郡市竹島町15-1
☎0533-68-1111

PROFILE

原由美子 Yumiko Hara
雑誌「アンアン」創刊時よりスタッフとして参加。2年後からスタイリストの仕事を始める。以後、数多くの雑誌のファッションページに携わる。著書に『原由美子の仕事 1970→』『原由美子のきもの暦』など。

●情報は、2019年2月現在のものです。
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Photo:Norio kidera Text:Michiko watanabe