和洋折衷の美しい文化遺産に
ゆったりと滞在する。
蒲郡クラシックホテルは、中部国際空港セントレアから車で1時間20分。ホテルとしての創業は昭和9(1934)年。蒲郡ホテルという名でスタートした、まさにクラシックホテルである。
車が坂道を上り始めると、ホテルの全容が見えてくる。昭和初期に流行ったという、鉄筋コンクリート造りに伝統的な和の屋根を載せた和洋折衷の城郭風の建物。銅葺きの屋根が青く渋く光っている。まるで、時代が逆行していくような、不思議な感覚。何だか、映画の世界に迷い込んだよう。
ホテルがあるのは、渥美半島と知多半島にまるで両手で抱かれるようにして佇む三河湾国定公園の真ん中あたり。目の前には、国の天然記念物に指定されている小さな島・竹島が見える。原さんは湘南育ち。
「江の島みたいで、親しみを感じます。それから、行ったことはないのですが、フランスのモンサンミッシェルのようでもありますよね」
もちろん、モンサンミッシェルほど大きくはないし、修道院もないし、世界遺産でもないけれど、通ずるものもある。387メートルの細い橋の先にある竹島は島全体が天然記念物に指定されているし、島内には、何と、5つも神社がある。モンサンミッシェルと同じく、祈りの島なのである。現在は、若い人たちにも人気のパワースポットになっているという。
中でも、ほぼ中央に位置するのが「八百富神社」。養和元(1181)年に創建と伝わる由緒ある神社だ。開運、安産、縁結びのご利益があるといわれる。長く「日本七弁財天」の一つに挙げられる神社という。蒲郡クラシックホテルからは、歩いてすぐ。晴れた日の散歩には最適のコースだ。
竹島へのお詣りのあとは、ホテルの離れの料亭「竹島」へ。実はこちら、ホテルの前身である、明治45(1912)年創業の「常磐館」の名残。当時の面影を残す貴重な建物でもある。かつて、菊池寛や志賀直哉、川端康成など、日本を代表する作家たちに愛された宿だった。
通されたのはつつじの間。目の前に海と竹島が見渡せるロケーション。ここに泊まるのも悪くないと思わせてくれる部屋である。
いただいたのはランチコース。ゆったりとくつろぎながらの食事に、原さんも大満足。ホテル内散策の準備完了である。
蒲郡クラシックホテル
料亭 竹島(蒲郡クラシックホテル内)
愛知県蒲郡市竹島町15-1
☎0533-68-1111
PROFILE
原由美子 Yumiko Hara
雑誌「アンアン」創刊時よりスタッフとして参加。2年後からスタイリストの仕事を始める。以後、数多くの雑誌のファッションページに携わる。著書に『原由美子の仕事 1970→』『原由美子のきもの暦』など。
●情報は、2019年2月現在のものです。
※本記事内の価格は、すべて税込み価格です。
Photo:Norio kidera Text:Michiko watanabe