愛知県蒲郡市にある100年の歴史を誇る由緒あるホテル、蒲郡クラシックホテルを、ファッションディレクターであり、スタイリストでもある原由美子さんが訪ねました。和と洋が優雅に、ごく自然に融合するクラシックホテル。短い滞在ながら、その美しさと心地よさを満喫しました。

旅ごころをくすぐる
懐かしく、温かい風景。

ホテルから国の天然記念物・竹島を望む。手前の丸く剪定された低木はツツジ。4月中旬から5月にかけて美しいピンク色に染まり、「つつじまつり」も開催される。春は潮干狩り、夏は花火で賑わう。

「一度、行ってみたかった」という蒲郡クラシックホテルへ旅をしたのは、ファッションディレクターであり、スタイリストでもある原由美子さんだ。かつて、ロケをしたスタッフから、素敵なところだと話を聞き、また、撮影した写真を見せてもらって、一度行ってみたいと思いながら、かれこれ数十年。この日までチャンスがなかったのだと言う。それだけに、感激もひとしおの様子だ。

今でこそ、スタイリストといえば、花形職業。憧れる人も多いが、原さんは、ファッション・スタイリストという職業がハッキリと確立していない時代から、スタイリストとして活躍を始めた、まさに草分け的存在である。男性の読者の方は原由美子という名に馴染みがないかもしれないが、女性ならば、これまでに雑誌のどこかで一度はその名を見てきたはずである。では、スタイリストって一体何をする人なのか。

「デザイナーが作った服を、編集者と共に選んだモデルに着せ、撮影場所を決め、カメラマンに撮影してもらって誌面にする」

それが雑誌スタイリストの仕事だと原さん。あの一世を風靡し、今もなお人気の雑誌『アンアン』の草創期、1972年から始めたこの仕事。

蒲郡クラシックホテルの芝生の庭に出てみる(現在は開放されていない)。

「最初は、企画立案から原稿書きもし、編集もしていました」

翌年、初めてパリコレ(パリ・コレクション。ファッション・ブランドの新作発表会)へ。そこで、洋服というものの素晴らしさ、おもしろさに感銘を受け、以来、ファッションの楽しさを多くの方にお伝えするスタイリストの仕事こそ、自分のなすべきこと、と今日まで務めてきた。年2回のパリコレには、2011年まで38年通い続けた。

現在はきものの美しさ、楽しさを伝える仕事にも力を入れる。和と洋、どちらの装いもよきものとして受け止め、同じように遊べる感覚は、日本人ならではのもの。もっときものを楽しんでほしい。きもの離れの進む昨今ではあるが、洋服とは違う、きものならではの楽しみ方があることをもっと多くの人に知ってもらいたい。そして、おしゃれに着こなして欲しい。それが原さんの願いでもあろう。

これまでの長きにわたるスタイリスト人生、今回は、その来し方を噛みしめながら、行く末を静かに観ずるノスタルジック&センチメンタル・ジャーニーになりそうだ。